小説1-V 第三節 バート卿のいた中央広間を後にし、城内の廊下を歩くイツェイル。 それを呼び止める兵士の声が聞こえる。 「イツェイル様!!」 「…おや、貴方はスリートさんの配下の方でしたね。」 「はい。それより、よろしかったのですか? "あの事"をヴェッフ様にご報告なさらないとは…。発見なさったのでしょう?」 「私には私なりの考えがある。それだけのことです。」 「しかし…」 「安心してください。バート卿を裏切る気はありませんよ…。」 「そう、ですか…」 「では、私は忙しいのでこれで。」 イツェイルは歩き去っていった。 イツェイルが城内の、ガラス張りの一室の横で立ち止まると、何やら声が聞こえる。 「…では、"儀式"を始める。」 「はい、お願いします…!!」 上半身裸で魔法陣の真ん中で跪く兵士の周りに、顔をフードで隠した数人の呪術士達が座り、そのまま怪しげな呪文を唱える。 [*前へ][次へ#] [戻る] |