小説1-V
第十節
王の後を継ぐ、いわゆる王子はいないらしい。
というのも女王が身籠り、その出産のとき女王もその子も亡くなってしまったのだという。
シャルファ亡き後、この国を継ぐとすれば、今テラス出入り口を守っている第一護衛兵のアブダーレか、若き側近のグラシュフだ。
ただ、アブダーレももうほとほといい歳だ。
「次に客人が来るときには、私はその者を迎えてやれぬかもしれぬ。お主たちがこの国へ訪ねてきてくれたこと、本当に嬉しいわい。」
いつしか、辺りは日が暮れ始めていた。
もちろんこの国の夜も長い。
この国では日が明けるまでの時間を寝て過ごすのだという。
この地域では夜は特に冷え、ひどく乾燥するゆえ、外出を控えるかららしい。
王の計らいでクロウ達は王城に泊めてもらうことになった。
フロールは女中が世話をしてくれるらしい。
至れり尽くせりとはこのことだと思いながら、眠りに着いた。
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