小説1-V
第七節
ものの数分でふたががたがたと振れ、ぶくぶくと沸き立ってきた。
立ち上る湯気からは刺激のありそうな香辛料の香りが漂ってくる。
また数分して鍋を火から上げると、店主は深めの皿に盛り付け、2人に手渡した。
これはまた、赤々としたトウモロコシのピラフだ。
湯気からは調理中のときとはまた異なる香ばしさを感じる。
口に運ぶと、一瞬香辛料の辛みが舌を刺激するが、それはすぐにトウモロコシの甘味でなだめられる。
じんじんとした辛みが残らず、食べやすい。
思いのほか、食が進む。
同時に口中に広がるのは、香辛料の"風味"だ。
鶏と香草のだしを加えているようだ。
薄味ではあるが、トウモロコシの味を阻害しない塩気と香りが次の一口を誘う。
「これはうまいな。」
フロールに至っては言葉さえ出ないようだ。
スプーンを口に運ぶたびに涙目にはなるが。
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