小説1-V
第五節
そう言ってクロウは膝をついてしゃがみ、白い闇の力を放つ手を光の穴にかざした。
ほんの一瞬かざしただけだった。
それを見ていたレイにもその力の大きさは十分に伝わっていた。
封印の空間が瞬時にねじれ崩れ、クロウの力に取り込まれて行くのを感じた。
視覚ではほとんど把握できないほど瞬く間の出来事であったが、肌で感じることはできた。
「――これで一安心だ。」
クロウは立ち上がって、レイに帰ろうと促した。
レイは茫然としていた。
「…クロウは、これからどうするんだよ? 闇の力の大元になったんだろ…?」
レイはグレアスから話を聞いていた。
クロウは既に闇の力そのものであると。
もはや人を超えた存在であることを。
レイは不安だった。
絶対存在であるクロウ。
もう人の前に、自分の前に姿を現さなくなってしまうのか。
「どうもしないさ。俺は今までどおりに暮らす。…何も変わりはしない。」
そういってクロウはレイの頭に手を置いた。
「本当に!? よかった!」
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