小説1-V
第三節
「――この穴を消せば、この"一件"は終わりだ。」
槍を持つ男が右手を少し開き、力を解き放とうとしたとき、聞き覚えのある声が耳に入ってきた。
「クロウ! やっと追い付いたよ。」
やってきたのは剣を背負った青年、レイだった。
このレイこそ"悪"を封じた勇者一行の主導者だ。
剣の腕も、属性の力を操る技術も、判断力もまだまだ洗練され切っていない、まるで子供のような立居ぶるまいの男ではあるものの、その素直な考え方や行動は旅を共にした誰もが共感したものだ。
「レイ、こんなところまで付いてきたのか。」
「父さんから話を聞いたんだ。村を出たらすぐイーストキャニオンに向かうって。」
クロウは光の穴の方へ向き直った。
「別世界へとつながる穴は、俺達はまだしも、"力"を持たない者にとっては好ましくない存在だ。できるだけ早いうちに塞いだ方がいい。」
「そうだね。普通の人が封印の空間に行っちゃったらどうなるか想像できないからなあ。」
レイはクロウの横へ並んで光の穴を見ながら言った。
「でも、こういう一つの世界を構成するような力ってどうすれば消すことができるんだ?」
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