運のない男の話
第四節
今日もなかなかの成果だったな。
俺の勝負強さは、2つしかない俺の取り柄の1つだからな。
ま、こういう時くらいは役に立ってくれねえと困る。
ちなみにもう1つは射撃の腕だ。
さて、この金の使い道は…
まぁいろいろあるが…とりあえず懐にしまっとくか。
店を出て、人混みに紛れて大通りを歩く。
道中目の前で、知らねえお嬢ちゃんと知らねえオッサンが肩をぶつける。
お嬢ちゃんの方はどこでも見かけそうな普通の女の子だ。
オッサンの方は帽子を深くかぶった、人相の悪い野郎だ。
お嬢ちゃんとぶつかった瞬間、お嬢ちゃんの懐からさりげなく財布を奪った。
スリって奴だな。
オッサンはそのまま俺の隣を通り過ぎる。
(仕方ねえ…)
「おっと、悪いなオッサン。」
俺はわざとオッサンに肩をぶつける。
よし、俺の財布は無事だな。
スリってのはこうやんだよオッサン。
心の中で自慢にもならねえ事を言いながら、遠ざかるオッサンの背中を見つつ、俺はあざ笑った。
さて、お嬢ちゃんの財布をスリ返したのは良いが、どうするか…
…俺は一度お嬢ちゃんを追いこす。
そして、忘れ物でもしたかの様なそぶりをしながら自然に振り返って…
わざとお嬢ちゃんにぶつかり、スリとは逆に財布を懐に戻す。
あとはそのまま周りに怪しまれねえよう、自然に歩き去れば全て元通りだ。
俺も、お人好しなもんだぜ。
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