ある漢の日常
第二節
男が居住区に入ると、途端に辺りが騒がしくなった。
中でも若者達は一際騒がしい。
そして、男は周りの人間の視線のほとんどが自分に向いているのに気づいた。
(なんか落ち着かねえな…)
男がどこに向かっても、視線が絶えることはなかった。
時にはこんなこともあった
「あ、あの!!」
「ん? 何だ?」
「あ、握手してください!!」
「…」
「だ、ダメですか…?」
「いや、こんな街中なのに、度胸のある嬢ちゃんだなって思ってただけだ。」
「だ、だって…」
「気に入った。握手だったか? 手ぇ出しな。」
男はその女性の手をギュッと握った。
「あ、ありがとうございます!! あの、写真も良いですか…?」
「あぁ。構わねえ。」
「夢みたい…あの、私、あなたの大ファンで…!!」
「見りゃわかる。ありがとうな。」
男はその女性の頭をポンと軽く叩き、去っていった。
その直後―――
「だ、誰かー!!」
「!? 大通りの方か…!!」
男は大通りへ走った。
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