夢を見る少女は [黒子/青峰/火神] 黒子誕生祝い 「光がつけてくれた明かり」 金曜日の放課後。 校内に鳴り響く下校を知らせるチャイムの音。 影の薄い少年は、人混みの中へ流されて行った。 「あれ、黒子は?」 今日は彼の誕生日。 ただいま、と玄関で呟けば静まり返る家の中。 ―――あ、そうか......今日は誰もいないだった。 リビングへ繋がるドアのドアノブから手を放し、自室へと足を進めた。 ドアを開ければ真っ暗な部屋。電気を付けようか迷った手を引っ込めベッドへ倒れ込む。 体が軽く弾んだ後、ゆっくりと確実に沈んでいく感覚を感じながら、まだ持っていたカバンを床へ伸びた手首の方に滑らせる。手に感触がなくなり、中の荷物によって鈍い音が響いた。 ―――何もやる気が起きない こんな日に限って嫌なことは頭を横切り、それを一つ一つ潰していく。もう終わった。今は違うから。色々理由を付けて頭の外へと追い出す。 部屋の中は暗くて冷たい。 雪が降るとは言っていなかったが、まだまだ一月の下旬。もう暫く暖房器具にお世話になる日々が続くのは明らかだ。 暖房を入れるには一度起きなくてはいけない。...やる気の出ない今の彼は動くということをやめた。 このままじゃ制服に皺が出来る。その考えも今日は金曜だと思い出し、思い出したとたん考えるのもやめた。 ――ピンポーン このまま寝てしまおうか、と思った瞬間。無機質な音が彼の耳に届いた。家族は用事があり家を空けると言っていた。 ―――じゃあ誰だ? 思ったのも束の間。ガチャ、という音が聞こえ誰かが入ってきた。 足音からして二人はいるだろう。声は聞き取りにくいが低さからして男なのは確かだ。 強盗か、いやまさか。 自問自答を繰り広げ、取り敢えず布団の中へと体を潜らせる。 ......。 ......。 ......。 足音は迷いなく彼の部屋の前で止まり、ドアを開けた。 「よぉ、テツ」 「電気くらい付けろよ」 聞き慣れた声が上から降ってきた瞬間、明かりがついた。 二人共背は高く、色の黒い青髪の少年は制服姿にカバンといった、帰宅途中の格好をしていた。もう一人は私服を着ており、手には大きめのビニール袋を持っていた。 「青峰君、火神君。何しに来たんですか」 「「今日はお前の誕生日だろーが」」 「...」 覚えられていたのと、何故知っているのかという二つの感情。一度に表すには難しく、黙り込んでしまった彼。 「黒子?」 「テツ?」 「すみません。まず始めに良いですか?」 軽く深呼吸をして、二人に視線をもう一度合わして彼は言った。 「二人共、不法侵入は犯罪ですよ」 言葉を無くしたのは彼らの方で、それぞれ皺を寄せた顔や呆れた顔をする。 その姿を見て彼は思ったんだ。 「不法侵入とか、鍵掛けないお前が悪い」 「それより黒子、台所使うぞ」 「仕方がないですね...」 やはりケーキに光は必要だ、と。 (ロウソク、使わないつもりだったんですけどね) ((俺らがつけてやるよ)) (...何本使う気ですか。ケーキは一人分しか用意していないのに) ((えっ)) [*前へ] [戻る] |