夢を見る少女は [青峰/夢主/キセキ/黒子/桃井] 青峰誕生祝い 「まずくても」 簡単手作りケーキ、の文字が大きく載っている本が一冊、私の手の中に収まっていた。 「桃井に任せると、最後の晩餐になりかねないのだよ」 青峰君の誕生日会を行うことが決まってから、緑間君に最もな意見と共に手渡されたのがコレだ。 お礼を言えば顔を思いっきり背けられたが、耳まで赤いところからして彼が珍しくデレたことに気付き黙って見送った。 私がケーキを作らなくてはいけなくなったのには断れない理由があったからだ。 誕生日ならケーキがないと。 そう言い出した黄瀬の一言で、料理が下手な友人が作る気満々になってしまったのを放っておけなかったから。 もう一つの理由は、赤司君の絶対的な後押しがあったからだ。 幸い、私は料理は不得意な方ではないため、青峰君の誕生日会でケーキの担当を任されてしまった。 「やったね。青峰君喜ぶよ」 『さつきも一緒に作ったって言ったら驚くね』 何とか無事に完成したホールケーキを目の前に、誕生日会が終わっていないのに早くも疲れてしまった。 そんな私を心配しながら、さつきはデコレーションが楽しかったらしく、ハイテンションのまま箱詰めを始め出した。 キセキの世代の中にはお菓子の国の妖精さんが一人いるため、ホールケーキは二つ作った。 ―――紫原君のことですから、ケーキは二つあった方が良いと思いますよ 黒子君の言うことは最もだったが、さつきと一緒にホールケーキ二つ作るのはだいぶ疲れたな。 砂糖と塩を間違える。なんて言う定番な間違いのおかげで一からやり直しをしたり......。 最終的にはデコレーションで力を発揮してもらったかな? 何がともあれ、無事作ったホールケーキを私とさつきで一つずつ持ち、誕生日会の会場となる青峰君の家に向かった。 「『誕生日おめでとう』」 「何か改まって言われると照れるな」 そう言いつつ、頬をぽりぽりと掻く青峰君は嬉しそうだ。 「はい、これ青峰君の分ね。私も頑張って作ったんだよ♪」 「げっ、マジかよ」 切り分けて持って来られた美味しそうなケーキを見下ろす青峰君の顔は引きつっていた。 昔からだけど、さつきは料理下手だからね。 無理もないか。 「安心しろ、青峰。勇花にも協力してもらっているから食えるはずだ」 ―――例え不味くても勇花の手作りなら食えるだろう? それをgoサインのようにフォークを手に取りケーキに刺す瞬間――― ケーキは紫原君の口へと入ってしまった。 たった一口で。 「んなっ!」 「んー、中々うまいぞぉ〜。さっちんおかわりは〜?」 青峰君の講義も虚しく、紫原君は早くも次を要求しだした。 「勉強会と言うのを忘れてるんでしょうか」 『どうだろうね』 「でも、青峰君の嬉しそうな顔久々に見たかも」 ――――無理もないですよ。好きな子が自分のために作ってくれたケーキが食べれるんですから。 「そうだね」 『良かったね』 ―――...... 「「「え?」」」 青峰と勇花が付き合うのは、それからだいぶ後のことらしい。 [*前へ][次へ#] [戻る] |