夢を見る少女は
[今吉/夢主] ホワイトデー今吉ver 「本命や」
ワシはバレンタインのお返しをようさんせなあかん………予定やった。ただ、彼女のたった一言でお返しは一つで良くなったや。
全ての始まりはワシがホワイトデーの話を持ち出した時に起きたんや。
「ホワイトデーのお返しやけどな、何もろたら自分はええと思う?」
こう聞いてきたのは先輩であり彼氏でもある今吉さん。
普通あげる側の人を相手に聞かないと思うのだが……。彼に言わせれば、女子の好みは分からんさかいとのこと。ようするに相手に喜んで貰いたいから聞いてきたのだろう。
『…ねぇ』
「何や?」
『私は本命をあげたんだよ?』
「?そうやな。それがどないしたん?」
目の前の彼はいつもの勘の鋭い人ではなく、本当に分からないっという顔つきで。
私が勇気を出してこの一言を言えたのに、全く気付いてくれない様子。
『他の子にもあげるの?』
「そうやな〜。 勇花 以外にもくれたさかい」
今吉さんは分かってないなぁ。私は私だけにバレンタインのお返しをして欲しいだけなのに……。
全く悪気のない彼にそんなこと言えなかった。
「……って事があったんや。桃井はどう思う?」
ホワイトデーの日が明日になりワシは焦ってた。
ホワイトデーに何が欲しいか聞いた時以来、 勇花 はワシを無視してくるし。お陰で何をあげたら良いか決められず桃井に相談する事にした。
「それは今吉さんが悪いですよ」
「?」
桃井の一言はワシには理解出来なかった。
桃井が言うには、 勇花 はワシが他の子にもお返しをするのが気に入らなかったらしい。
「取り合えず、 勇花 以外には渡しちゃいけません。…多分怒ってません。嫉妬しているはずですよ」
ワシは桃井に礼を言うて、明日のお返しを買いに走った。
「この間はすまんかったのぉ。 勇花 が本命をくれたさかい、ワシも本命や」
嫉妬してくれて嬉しかったで、とはワシが恥ずかしくて言えんかった。
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