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青い君を愛する少女は
妖怪一家

冷たい手で頬を叩かれ目を覚ました。



『起きろー、点呼始まんぞー』

「......おぅ」



昨夜は同室でもあるコイツ、翔弥に巻き込まれて今吉サンに説教された。
おかげでベッドに入ったのは実質今日であって、点呼の三十分前に人の顔を叩くコイツの気がしれねぇ。

....あぁ、もう少し寝てぇな―――



『あれ、寝ぼけてるのか....?』

パッシーン






「おはよーさん」

『っはよございます』
「....」



ヒリヒリする頬に手を当てながら点呼を受ける。
隣では、朝から艶の良い肌をした翔弥が、これまた俺の前にいる今吉サンと同じ、何を考えているのか分からない顔で口角を少し上げ軽く笑っている。



「青峰、何でもみじ何か付けとるん?」

「座敷わらしにやられました」



そう返答すればギシギシと圧が掛けられる俺の右足。見下ろさなくても分かる。ギギギっと効果音がつきそうなくらいのスピードで隣人の顔を除けば、これ以上ないスマイルが送られた。

兄弟揃って容赦ないなと思いつつ、しまった、弟が座敷わらしの前に兄は―――



「失礼なやっちゃなぁ。ボタンちゃんと留めて、ネクタイもちゃんと締めてから登校せぇよ?」

「....うっす」



こちらの方が一枚も二枚も上手だとでも言いたげに、これまた口角を少し上げ軽く笑われた。
何故だろう。今吉サンがしていること事態は、後輩をからかってる先輩なのに、明らかに心を見透かし、そのくせ怒りもしないことに冷や汗が流れつつドアを閉めた。


....俺の周り妖怪だらけじゃねぇか。


溜息をつけば、幸せ逃げるぞーと下から声がする。
誰のせいだ、誰の。

今吉サンに指摘された通り、ボタンを留めネクタイを解き再び締める作業に掛かる。



『お前下手だから俺がやってやるよ』



ほれ、と手を出されたのでその手にネクタイを置いた。
今度は座れと椅子を指され、渋々座る。何でこんなことになってやがる。

俺とやり方は違うものも、気付けば後はキュッと整えるだけに。たまには気がきくじゃねぇか。



「....」

『....』

「こ・ろ・す・き・か」

『まさか〜』



俺ゴールデンウィークに生きて実家に帰れるかなぁ。






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