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story
Take 1 B






授業終了のチャイムが鳴る。


 これで今日の授業は終わりとなる。
未来はあらかじめ帰る準備がしてある自分のかばんを手にとり、足早に教室を出る。



 はじめは迷ってばかりいたこの学校だが、今はゲームのダンジョンと同じく攻略してある。どのルートが一番早いのか。どれくらいかかるのか。すべて頭に入っている。

 未来たちの教室は一階にあるが、校舎がでかすぎて、校門までは遠い。外に出て、一番近くにある塀を上れば早いのだが、警報が鳴る。

 いちいち面倒くさい学校だ。

 やはり結局はこの長い廊下を歩くしかない。

 しかし、長い。どんなに早足で歩いても長い。もちろん走ったらいくらなんでも格好悪いからやらないが。
 ほら、廊下を真剣に走っている高校生って、恥ずかしくないか?

 しかし、べつにこの廊下が長いのは別に今に始まったことじゃない。なのに、長く感じられるのは・・



間違いなくあいつのせいだ。




今から数時間前―


 あいつ・・・森 尚夜は、自己紹介の後未来の左斜め後ろの席に座った。未来の席が、教室の一番後ろから二番目の真ん中近くに座っていることから推測すると、あいつは同じく真ん中近くの一番後ろの席に位置している、ということになる。

 まぁそんなことはおいておくとして、だ。

 森 尚夜はなぜか未来を観察していた。授業中自作のパソコンで遊んで時間をつぶしているときも、休み時間机に伏して居眠りしているときも、ずっとあの今朝のおとなしくみえて、実はするどいあの眼光で未来を突き刺していた。

 なぜだかは未来にも分からない。

 昔あったことはあるかと言われても違う気がする。ただ、分かることは、あいつが不気味だということだけ。四六時中あいつが観察しているせいでどうも居心地が悪かった。


「・・・一体俺が何したって言うんだよ」


 やはり、分からないものは考えても分からない。 
まぁつまり、今早足で廊下を歩いているのは、やっとあいつから解放されたので早くここから抜け出したい、という思いからだった。





 ついにゴールが見えてきた。




 これまでにないこの達成感。



 しかし、あのいやな視線を感じた。


 まさかとは思うが周りを見渡すと、

 下駄箱の近くの壁によりかかっている影が見えた。そろっと覗くと

 「あいつ」だった。

 もちろんあの自信ありげな鋭い眼光を放ちながら、ニヤリとした口を顔に貼り付け、こちらを見ていた。





 げっ



 持っていた鞄がどさっと落ちる。

 しかしもう未来は面倒くさくなり、見なかったことにした。そして落とした鞄を拾い、すばやく下駄箱のところに滑り込み、下駄箱を開く。

 そしたら、ひらりと一枚の紙が下駄箱から床に落ちた。


 拾い上げて紙を見ると教科書みたいなきれいな字でこう、書かれていた。


「今日の放課後、体育館にて待つ」


 はっとして、下駄箱の近くにある壁を見る。そこにあった影はもはや、なっかた。

 そう。

 この教科書みたいにきれいな字は今朝見た「あいつ」の字と同じだったのだ。つまり、この真意の分からない手紙は「あいつ」が書いたということ。ラブレターじゃないんだからこんな典型的なことしやがって・・・

 

 はぁ・・・・・・



未来はわけの分からない状況が続く今に、


ただ頭を抱えた。














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あきゅろす。
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