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属に言う帰宅部の平均的活動
近代科学への挑戦と科学部部長の思い
いつものように、部室に行くと冴子と神有彩が何やらCDディスクのようなモノを、取引していた。

「マヤさん、これ」
「・・・ありがとう」

「よう」

声をかけると、二人が俺に挨拶をする。

「何なんだ?それ」

聞くと、冴子から話し始
めた。

「あっ・・あの、これこの前見せた、マンガがアニメ化したのでそのブルーレイを・・・」

「マンガって、あれか!?」


仰天の声を上げると神有彩が中に割って入ってきた。

「・・・りんりんぱわー
ちゃーじあっぷ」

・・・成るほど。

そんな会話をしていると馬鹿が登場する。

「よう!皆の衆!」

騒がしい声で、挨拶して入ってきた。

「桜田さん。うるさいですよ」

「だって、嬉しいんだも〜ん」

馬鹿がうるさいとこんなにもウザイんだろうか・・・


「うざい・・・桜田」

神有彩がいち早く、発言する。
真横で、冴子がビクッ・・と動く。

「ご・・・ごめんね。マヤさん」

「・・・違う」

「・・・え?」

なんて、ほほえましいやり取りを交わす傍ら
・・・桜田は泣いていた。


「・・・で、何が嬉しかったんですか?」

泣いている桜田に声をかける。
神有彩はそんな桜田の頭を無言で撫でていた。
冴子は黙ってそれを眺めていた。

「だって・・だってよぉ」

あまりにも、ショックが大きかったらしく俯せになってヒクヒクと泣いていた。



冴子からチロルチョコを貰って泣き止んだ桜田に俺はもう一度聞く。

「・・・で、なんすか嬉しかったことって」

口にチョコを頬張りながら、かばんをあさる。

「そうそう、それなんだけどさ」

そして、一枚のディスクを取り出した。

「ほれ、これだ」

「なんすかこれ、普通のDVDっぽいですけど・・・」

「お前にとっては、普通かもしれんが俺にとっちゃ最新の代物だ」

自慢げに、ひらひらと顔のまえでうごかす。

「さ・・・最新って、今はブルーレイの時代ですよ」

「・・・!?」

「・・・まさか、知らないわけないですよね」

沈黙が流れる。
額には冷汗が垂れていた。

「あ・・・あれだろ?確かに綾波は髪青いけどさ・・・」

苦し紛れの正論。
「はぁ・・・」
俺は頭を抱えた。





「ブルーレイってなんだ・・・・?」

冴子に貰ったわたパチをくらいながらエラソーに質問してくる。

(さっきまでグズッてた癖に・・・)

「な・・・なんだって言われても・・・」
正直どう答えたらいいかわからなかった。
そもそも、なんでブルーレイって言うんだ?
青いレイってなんだ?
やっぱり綾波の事か?

(いや・・・そんなバカな・・・)

助け舟を呼ぶため、冴子に目線を向ける。

「・・・・」

両目に両手を当てて苦笑いしている。

(かっ・・・神有彩ーっ!)

神有彩に目線を向ける。

「・・・うごかない。ただの屍のようだ・・・」

両目から光を発している。

「・・・・・・・・・」
「・・で、ブルーレイってなに?」

桜田が、追い撃ちをかけるように聞き返してくる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・わかりません・・・」









今回の議題。
「ブルーレイの真髄について知る」



桜田が腕を組んで、口にペンをくわえ議題をホワイトボードに書く。
その間、神有彩はパソコンを起動させる。
この辺の要領は弁えてるようだ。
冴子は、黙って目をつぶり腕を組んで椅子に体重をかけていた。
そして話し合いが始まった。

「まず・・・・ブルーレイってなんだ?」

「さっきから、その一点ばりですね」

「じゃ、どういったらいいのかね・・・」

桜田が座ると同時に、パイプ椅子から軋む音がする。

「うー・・・ん。例えば、ブルーレイってのはみたかんじDVDとほとんど変わらない気がするんだけどその辺はどうなんだろ?神有彩?」

「・・・・・・はい」


神有彩が立ち上がる。

「・・・あくまでわかりやすく説明すると、DVDより画質が綺麗。音声も立体音響に聞こえたりするなど、幅広い場面でDVDより高性能なものがブルーレイ・・・」

桜田をみて落ち着いた言葉でわかりやすく説明できる彼女はやはりさすがだと思う。
少なくとも、俺よりは説明の仕方が上手い。

「・・・なるほど、これは詳しい調査が必要となってくるな」

顎に手を当てて唸っている。

「あ・・・あの、お兄ち・・・・・部長」

「なんだ?」

「このディスクの裏面を見て頂きたいんですけど・・・」

「ん?裏?」


二人はディスクを裏返す。
しかし、神有彩だけ俺を見つめていた。

「・・・・・・浦・・」

「・・・違う。ディスクの裏だ・・・」

「・・・・裏・・・」

神有彩もディスクを裏返す。
それに続き、俺もディスクを裏返してみる。
キラキラして、でもどこかDVDとは変わった印象をかんじた。

「私、このブルーレイとかDVDのディスクを見て前から気になってたんだけど、このディスクの裏って溝があるんですよね。この溝のおかげで映像が綺麗に見えるんですよ」

「ああ、それは知ってる」

すると、また視線を感じた。

「・・・浦・・・・綺麗・・・」

「・・・・・お前わざとやってるだろ?」


すると、ディスクの方に目線を戻す。

(やれやれ・・・)

俺も、裏に視線を戻す。

「・・・で、なんだ?気になってることって」

「えぇ、その話何ですけど・・・・」

一息入れて、言葉を繋ぐ。

「この溝・・・・どういう風になってるか調べてみたいんです。この溝、CDにもついてるんですよ。だから、CDと比較してどう違うのかもしらべてみたいんです。できれば・・・拡大して」

「・・・・わかった。」

桜田が立ち上がる。

「どこにいくんですか?」



「決まってるだろ・・・・・・科学室だ」











「なんでこうなるんだ」
科学室の真ん前で呟く。

「しかたないだろ?妹の頼みなんだからよ」

「しかもなんで、部員全員で来るんだよ・・・・」


俺の真横に神有彩と、冴子が並ぶ。

「だって神有彩置いてきたら可哀相だろ?」

「・・・・浦。・・・冷たい」

(えぇ〜・・・・)
「・・・・・全く・・・ばかやってないで行きますよ」


扉を開けると、科学部が部活をしていた。

「あの・・・・科学部部長いますか?」

その辺の部員に話しかける。

「・・・・ん」


白衣を着た部員が、右を指差す。
その部員に軽く会釈して言われた所に向かう。

すると、眼鏡をかけて鋭い目つきで、長い髪の毛にカチューシャを付けている女の人がビーカーとにらめっこしていた。


その人に承諾を得て、顕微鏡を使わせて貰う。

「おー。」

「確かに溝があるな」

「でしょ?」

「・・・・・いいね」


今まで気づかなかったがこんな風になってたのか、CDの裏って・・

「ところで桜田さん。これは何のCDですか?」

「ああ、これ。俺が昔やってたバンドのファーストシングル。」

「えぇぇ!?バンドやってたんですか!」


大声を出し、科学部員から睨まれる。

「おい、うるさいぞ。浦沢」

「は・・・・はい。すいません・・・」

(そうだな・・・今は桜田さんがバンドやってた頃の話より・・・ブルーレイの方が優先的なんだ・・・そう、ブルーレイの方が・・・)


変な気分になりながら、自分に言い聞かせた。
続いて、DVD。

「・・・・・あまり変わりませんね」


続いて本命のブルーレイ。
「あ、これも溝が見えるんですね」

「どれ、冴子。見せてくれ」

「・・・・・・・・・・見える」

ブルーレイにも、溝のようなものが見えた。












「うーん・・・・・」

「どうしたんすか?桜田さん」

科学室から帰ってきてから、ずっと唸っている桜田に声をかけた。

「あのあとさ、ずっと考えてたんだが・・・・」
「何をですか?」

閉じていた目をあけて、言う。

「ブルーレイさ。俺達にも作れるんじゃないか?」
「馬鹿ですか、あなたは」

「そ・・・・即答?」


どう考えても、おかしすぎる。
なにがしたいんだ。
もう、ムカつく。

「大体、現代化学の最先端をそう楽々と作れるわけな・・・・」

「よし、やってやろう」

「おー」

みんな、俺の言葉より先に返事をした。
・・・・みんなに無視された。










「じゃ、テンションあげていってみよーっッッッッ!!」

「はーい!」
「よっしゃ!冴子ぉ!」
「つまようじで、DVDにブルーレイの溝掘りまーす!」
「よっしゃぁぁぁぁ!ッッッッやってみろぉぉ!」
「はぁぁぁぁぁぁあぁぁあああっ!」

カリカリカリカリカリカリ・・・・





「映んなくなっちゃった」
「ぐっじょぶ冴子ッッッッ!」
「おまえら馬鹿だろ」

すると神有彩が、はーいと無言で手を挙げる。
「よっしゃ!神有彩!」
「・・・・・・私・・・ブルーレイ掘れる」
「・・・!!??」

空気が凍り付いた。
さっきまでの熱気は冷め、沈黙が訪れる。
この部活には珍しいシリアスな雰囲気だった。
「・・・行きます」
がりがりがりがり・・・


「ち・・・ちょっと」
ガガガガガ・・・・・・ピタ
「・・・・・ちらり」
「いや、擬音言わなくていいけど、神有彩それ・・・・」


机にブルーレイの文字の「ブ」を掘っていた彫刻刀見せ付けるように両手を挙げる。

「あのね、神有彩。・・・そういう意味の掘るってことじゃないの」

「・・・・・・」

顔が真っ赤になる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彫刻刀をしまう。




その時。
「話は聞かせて貰った!」
どこからか声がした。
どこだ?

後ろか?
下か?
上か?
斜めかぁ?
「ここだぁぁぁっ!」
テレビを叩き割り入口から登場したのは・・・
「そのブルーレイとやら。我々科学部にまかせたまえ」

「あ・・・・貴方は科学部部長、(鳳凰廻 乃衣)さん!」

「桜田さん。それよりテレビが・・・・」

「うるさい!今は助っ人が出てきてくれたことを嬉しく思おうじゃないか!」

(助っ人って・・・・それに大体、ブルーレイ作るって発想が馬鹿だろ・・・・てか、テレビ叩き壊す必要あったか?)

もう、なんかどうでもよくなってきた。

(もう・・・・どうでもいいや・・・・)

「で、えーっと・・・・ほうおうかん・・・・さん?」

「ほう、私の名前を読めるとはなかなかの兵じゃないか。」

「つ・・・つわもの?」

「まぁ、いい。気にするな・・・・で、なんだ?えーっと・・・キミ!」

「・・・浦沢と言います」

「ほぅ・・・浦沢君。で、何の用だ?」

神有彩が出してきたパイプ椅子に彼女が腰を下ろす。

「あの・・・・どういったご用件で?」

「私は話が長いのは嫌いだ。だから手短に話す。ざっくばらんに言うと、君達に少し興味が沸いてな、だから協力したいと思う」

「興味?」

「いやなに・・・ちょっとしたこっちの話さ」
腕を組んで、訝しげに話す。

「で、どうかな?今から科学室でブルーレイディスクについて語りたいと思うのだが・・・・」

「じゃ・・・・まぁ、行かせていただきます」
「うむ、よい返事だ」

そういって立ち上がると、彼女が桜田に小声で話していた。

「なかなか君の後輩にしては素直な男じゃないか」

「いやそんな・・・それよりホントありがとうございます。」

「なぁに、昔からの仲じゃないか。それより私に敬語を使うのをそろそろやめたらどうかな?そんな関係ではないだろう」

「いや、なんかつい・・・そういう性分なんでしょうな。俺は」

「はは・・・相変わらず面白いな君は」

「いえいえいえ・・・・」

二人の話を聞いているととても親しい関係に思えてくる。
ましてや、あの桜田が敬語を使うほどの人だ。
それ相応の権力の持ち主だろう。
「さて、君もいこうか。準備は出来ている」

「・・・ええ、わかりました」

ここまで言われたらついて行くしかない。いやむしろついて行かなきゃ空気読めてないと言われてしまいそうで、嫌だった。







「まず、君達が今までやってきた方法を教えてくれ」

「・・・・爪楊枝で、溝掘ったりしてました」
科学室に何故か俺と桜田だけ呼ばれ、質問される。
正直俺達のやってたことは、馬鹿一色の事だったので呆れられると思ったが・・・

「へー、その発想はなかったな・・・」

腕を組みながら考え込む。
そして、目を閉じてこう言った。

「でもな・・・・」

「え?」

「人が何年もかけて作り上げた品を、数時間で作り上げようとするのは余りにも失礼なんじゃ無いかな?」

「・・・・・?」

イマイチわからないが、とりあえずなんか怒られている。

(なんでおこられてんの・・・・?)

ふと、横を見ると桜田さんが啜り泣いている。
「な・・どうしたんですか?」

「・・・・愛だよ」

「は?」
泣いている桜田に疑問の目線を投げかける。

「俺達には・・・愛が足りなかったんだよ」

「あ・・・あい?」

「そうだ・・・」

すると鳳凰廻さんが俺と桜田の肩を叩いて、間に入ってくる。

「さあ、泣いていても仕方ないぞ」

「そっ・・・・そうですね・・・」

「俺泣いてないんすけど・・・」

そんな俺を無視して、二人は続ける。

「桜田君、君も成長してくれたね。私は嬉しいよ」

「ほっ・・・鳳凰廻さん」

二人の空気に飲み込まれ、俺も歩きだす。
そして思う・・・・

(神有彩と冴子が来なくて良かった)
・・・・と。










その頃、帰宅部部室。

壊れかけのテレビから音が聞こえる。
(もう!ゆるさないもんね!私のヌルヌルビームで貴方を一瞬でイかせちゃうんだから!)
(えっ?あんただれだよ・・・)
(えーい、リンリンパワーチャージアップ!)
(ええーっ!!)
ズビシッッッッ
(えへへっ・・・・手屁っ☆)



「案外・・・・・つまらない」
「そ・・・・そうですねマヤさん・・・」




そんな穏やかな春の午後の話でした。

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