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崩壊
発覚-3



 紺色の捜査服に身を包んだ鑑識班が慌ただしく動き回っていた。黄色テープの内側には泥に汚れて古びた青いアウトウェアが控えている。
 拾い物は白骨化した遺体だった。宮内と藤堂は少し離れたところから様子を見ながらマーヴェルが邪魔をしないようにと首に付けた手綱を短く握っていた。



「とんだ拾い物だったな」



 藤堂の呟きは独り言なのか宮内に対してのものか判断がつかなかった。



「課長は何て?」



「何ともつかない声で嘆いてたよ。お前ら休暇中なんだろうってな」



「間違いないな」



 宮内は苦笑した。休暇中に態々仕事を見付けに行く人間などいないだろう。



「管轄は?」



「県警本部が指揮を取ることになるだろうってな。ただの事故か事件か結果が出るまでは動けないって云ってたがな」



「そうか」



 もし事件となれば自分達が動き出すことになるだろうと宮内は思った。
 神奈川県警捜査一課。そこが宮内と藤堂が所属する組織だった。



「しかし白骨化されるまで誰にも気付かれず野晒しにされていたのか?」



「いや、何かの拍子に土砂崩れを起こして露見したんだろう。人通りが少ないとはいえ近くにはキャンプ場なんかもあるんだ。こうなるまで誰にも気付かれないなんてことはないだろう」



 遺体が見付かった沢までは車で入ることは出来ないまでも沢伝いに上流に上ってくる人間も少なくはないはずである。五キロも歩けばキャンプ場が設置してある。



「事件にならなければいいんだがな」



「失踪か継続か。どのみち荒れるだろうな」



「ああ」



 冷たい風が頬を裂くように吹き付ける。山の斜面に陽が傾いて終えば日没まではあっという間だ。急激に下がる気温が宮内たちの体温を奪っていく。
 半分土に埋もれた遺体を発掘するのに手間取っている。恐らく運び出すのにも時間が掛かるだろう。
 山間を吹き付ける風と気温が捜査員たちの士気を下げている。瞬く間に光を失うこの状況で宮内は沸き上がる焦燥に襲われていた。



(何がある?)



 隣で大人しくしゃがみこんでいたマーヴェルが切な気に鼻を鳴らす。
 主の微かな心の動きに敏感に反応したのかもしれない。



「どうした?」



「いや」



 その不穏な空気を藤堂も察したようだ。



「胸騒ぎがする」



 それは帳の下りた薄闇の中で、静寂が何かを告げようと戦慄いているかのように感じた。眠りについた鼓動が恐怖に震えるように、悪夢は音もなくその背後に忍び寄ってくる。
 宮内は背筋に悪寒のようなものを感じて振り返った。黒く塗り潰された山肌を縁取る稜線の向こう側に空は不気味な色を映し出していた。

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あきゅろす。
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