山茶花の別小説
とあるカイーナのいちにち その3
「なぁ、いいだろ?頼むよ」
「断る。俺は遊びに行くわけではないのだぞ」
 けんもほろろに断られてしょげ返ると思えば、にんまりと笑ったアイアコスにラダマンティスはぎょっとした。

「だったら、この任務俺が貰ってもいいよな?」
 いつのまにか、アイアコスの手にはパンドラからの命令書が握られていて。
「おい、返せよ。遊びじゃないんだぞ」
 慌てて取り返そうとするも、アイアコスはひらりと身をかわしラダマンティスの手の届かないところに行ってしまう。
「なになにィ…聖域からの『たなばたまつり』へのお誘い。…ちょうどいいじゃん♪これも〜らい」
 アイアコスが手にしたのは、聖域の女神アテナが冥界の女主人パンドラに当てた日本の風物詩とやらにかこつけた趣味の集い…彼女たちとジュリアン・ソロも交えた3人はオタ友達でもあるのだった。

 そして、パンドラのお供で参加したイベントに感化されて見事にあんなに馬鹿にしていたオタクに開眼した男が一人。

「いやぁ先日のイベントで手に入れ損ねた神本を通販してもらうのに、申し込みはメールで冥界からでも出来るし、入金もネットバンキングって手があるんだが、さすがに受け取りだけは地上に出向かなけりゃいけないんだよなぁ〜」
 ラダマンティスの手の届かないところでワザと書類をぱたぱたさせながら反応を見ている。
「アイアコス…それは俺も楽しみにして…」
 無駄と知りつつも手を伸ばしてみるラダマンティスだったが、相手はそれを見越してさらに後ろへ動いている。
「いくらなんでも黒にゃんこも冥界にまでは配達してくれないから困ってたんだ。いやぁ〜助かった助かった。持つべきものは友!だな。ラダマンティスのおかげだぜ、はっはっは」
「アイアコス…返してくれ…カノンの浴衣姿…」
 楽しげな高笑いを残してアイアコスは、ラダマンティスの執務室をでていった。

「失礼いたします。ラダマンティスさま、アイアコスさまお飲み物を持ちしました…?」

 来客用の飲み物を手に現れたバレンタインが見たものは、執務机に突っ伏して真っ白の灰に燃え尽きている第9獄の主の姿だった。


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