山茶花の夢小説
らっぱのマーク 2

 ガチャ!
「なぁちゃん、頼みがあるんだが」
 ドアが開くのが先か、本人が入ってくるのが先か。
 長い巻き毛を揺らして入ってきたのは蠍座のミロさんね。
「うるさいぞ、ミロ。医務室では静かにするものだ」
 早速、サガさんの雷が落ちる。首をすくめてやり過ごすミロさん。私と眼があってウィンクをひとつ。

「いや、悪かった。少し焦っていたんでな。…俺のカミュが、このトランペットのしるしがついた薬を求めているのだが、下の薬屋には取り扱いがないというのだ。何とかならん物だろうか?」

 トランペット?もしかして、これのことかしら?
「どんなしるしなの?見せてもらえるかしら」
 勿論だ、とさしだされたそれは、まごうかたなきらっぱのマーク。でもなんで、フランス人でシベリア在住のカミュさんが日本の正○丸なんか知ってるのかしら。
「いつもはカミュの教え子の氷河が、こちらへ来る際に持ってきてもらっているそうなんだが、今回はなんと税関に引っかかったらしい。それで、手持ちの分がなくなったので困っているそうだ。」
 なるほど、カミュさんって氷河君のお師匠さんにあたるんだっけ。でも、なんで正○丸が税関に引っかかったんだろう。

「そんな危険なクスリなのか?」
 少し首をかしげてサガさんが不思議がる。私もフシギだわ。
「違うと思うが、いつものクスリが品切れで、同じクスリだけど違うタイプのものにしたんだとさ。そしたらニオイがキツイ奴だったそうで『毒ガスだ〜』って騒ぎになったらしい。それで没収されたとさ」
「毒ガスと間違われるとはすごい匂いなのだな。」
 身振り手振りを交えて説明するミロさんに、サガさんが頷いている。
 
 そんなに凄い匂いかなぁ。ワリと好きだったりするけど、まぁ慣れてない人には異臭かもね。

「はい、お待たせ。こっちはカノンさんの分。こっちはカミュさんの分よ。」
「おや、何だと思っていたら同じクスリなのだな。では、カミュの奴も腹具合が悪いのか」
「ほんとだ、同じ奴だな。しかし、カノンはカミュと違ってそう繊細には見えないが」
「確かにアイツは繊細ではないが、胃腸の方は繊細なのかして、折角の休みの日も大概は午前中はつぶれるな。どこかへ行こうと計画していても、計画倒れになる事も多い」
「俺のカミュは繊細だからな。気候の変化に耐えられんのだ。」
 
 私と看護師の皆さん苦笑い。…ようは貴方達がゴム付ければ済むことなんだけれどな。
 
とうぶんらっぱのマークが活躍する日が続きそうです
                   

 終


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