山茶花の夢小説
らっぱのマーク 1
コンコン…。
「ドクターサエラおられるか?」
短いノックの音の後で双児座のサガさんの声がした。なんだろう?あの人たち黄金聖闘士はめったに怪我なんかしないはずなのに?
「はい、どうぞ」
「今日は、どうされましたか?」
どうみても、具合の悪いところなんか一つもなさそうなサガさんに尋ねてみる。この人たちは全然平気そうな顔して、反対側に曲がった指とか見せてきたりするので、たとえ元気一杯に見える人にも一応は聞いてみることになっているのよ。
「いや、今日は私ではない。私の双子の弟のカノンの奴が朝からトイレに立て籠もったまま出てこないので、また腹を壊したのだと思う。いつもの腹痛のクスリをもらえるだろうか?」
あー…カノンさんね、はいはい。
私は手早く日本から持ち込んだラッパのマークの糖衣錠を、サガさんが持ってきたカノンさん用のピルケースに一回分ずつ分け入れてあげた。聖闘士の皆さんって自分の体力を過信しているとこがあるから、あまり用法要領をきちんと守ってもらえないので全員に自分用のピルケースを持たせて、それぞれ一回分ずつ入れてあげることにしたの。それこそ口を酸っぱくして噛んで含めるようにいってるのに、呵呵大笑されたら虚しくもなるってものよ。
「朝と夜は私と同じ物を食べているはずなのに、なぜアイツばかりが腹を壊すのだろう?海底神殿での食事はそんなに悪いのだろうか?」
今度会議で海皇にあったときにでも、一度聞いてみなければなとひとりごちているサガさんに、みんなでいっせいに心の中でつっこんでみる。
『恥をかくだけだから、お止めになった方がいいですよ』
カノンさんがしょっちゅうお腹を壊す原因は、私たち医療関係者にはもうみんなわかってるの。
カノンさん自身もほんとはわかってるんだけど…当のサガさんだけがわかってないワケ。
一度カノンさんに私の口から言ってあげようかと提案した事があったんだけど、逆に困ったような顔で笑ってあいつのしたいようにさせてやってくれって頼まれてしまったの。本人がそういうのだから、私の出る幕はもうないわけよね…。
約束だから言えないけど…守秘義務っていうものもあるわけだし。でももう、あんまりにもあんまりだから言ってしまいたい!
「あなたがカノンさんに中出ししたせいでしょ!」
…カノンさんはホントにサガさんが好きなんだなぁ…
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