山茶花の夢小説
任命式        その5
 幾らお酒に強いとはいえ、昼間っから呑んでては流石に回りが速かった〜。夕方に一旦解散の運びになったんだけど、有志はそのまま夜まで飲み明かすらしい。
 確かに、これじゃあ肝臓やられるのもムリないわぁ。実戦的な白銀や未成年が多い青銅はともかく、黄金のお兄様方の飲みっぷりがスゴイ!しかも全然酔ってないし!
 何なのかしら、あの人たち?

 酔い覚ましもかねていい気持ちで12宮の階段を登っていた私は、石の階段を踏み外して真っ逆さまに転落しちゃったのよ!

「きゃあぁぁぁぁぁぁ………あ?」

 てっきり硬い石段に叩きつけられると思い込んでいた私は、とん!という軽い衝撃にびっくりしたわ。

「危ないな。此処の石段は意外と滑るから気をつけろよ」
 後ろから、さっき聞いたばかりの誰かの声がして私は誰かにぶつかって止まったのだとわかったけど、そう都合よく後ろをひとが歩いてるなんてことがあるのかしら?

「おぉ、カノン!間に合って良かった」
 人のよさそうな大きい人…アルデバランさん…だっけ?がこちらに向かって階段を駆け上ってくる。
「たまたま下から上がってくる時、何の気なしに上を見たらこの女が足を踏み外そうになっていたので、異次元を通って空間移動したまでさ」
 いじげん?くうかんいどう?この人なにを言ってるのかしら。眼を丸くしている間に追いついたアルデバランさんと、私を助けてくれた人が言い争ってる?

「だから、仮面をつけてないこの女は何者なんだ?」
「今日、赴任された新しい女医さんなんだそうだ。だから仮面はナシだ。聖闘士じゃないからな」
「あぁ、確かそういう話が出ていたな。そうか、今日だったのか」
 アルデバランさんに手を貸してもらって、私はやっとこさ自分の足で立つことができた。今まで私は後ろの人に張り付いた体制から動けなかったのよね。
 
「助けてくださってありがとうございます。私は今日付けでこの聖域に着任した女医のサエラ です」
 振り返りざまに一息で言ってのけた私を誰かほめて欲しい。なぜかと言うと、次の瞬間私ったら魚のようにパクパクするだけで声が出なかったからよ。
 
 私を助けてくれた人は、すらりとした長身で引き締まった体躯の野生的なハンサムさんだったの!どうやら、私はこの人の広い胸に倒れこんだらしかったわ。

「サエラちゃん、酔っ払ってるなら寮の方まで送ろうか?」
「よせよせ、お前の方が危険だろデス!」
「なら、俺が送ろう」
「貴方がいくまでもありません。ここは私が」
 わらわらと黄金聖闘士の皆さんが私のために集まってくれるなんて。ちょっとハッピー。

「カノン!」
 そのとき、風を切り裂くような声がして、振り返ると両腕を高く組み合わせたサガさんが居たの。

「ギャラクシアン・エクスプロージョン」


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