山茶花の夢小説
にゃんこものがたり番外編 15

「ふむ。なかなか小奇麗にやっているようだな」
 かのんの身体をぎゅっと捕まえたまま磨羯宮の居住区に足を踏み入れた教皇は、居心地よく整えられた空間を見てそういった。
 よくよくみればあちこちに猫グッズが転がっていたりするのがご愛嬌ではあるが、弟子も取らず公務以外に侍従の手を煩わせるのを嫌うストイックな山羊座を知っている者には目を見張るべき勤勉さであると言えよう。おまけに男の一人暮らしというだけではなく、ここには猫もいるのだ。

 その猫の血統書に記載されている名前は****。かのんにとってその猫はもうひとりの「さが」だという。どんなに愛してもあくまでも人と猫では番う事が出来ない。サガを飼い主ではなく異性として愛し始める前にかのんがであったサガそっくりな雄猫。サガ本人ははその猫にはあったことがなかったが、そんなにまでかのんが逢いたがる相手には興味があった。
 幾ら血統書付きの希少な猫とは言え、可愛がってきたかのんに相応しい相手でなければ有無を言わさず処断をくだすつもりでいた。命をとるとまでは言わぬ。なんならシュラの故郷のスペインか、世界の果てででもとにかくかのんに手の届かない所へ追いやるつもりだったのだ。
 聖域で誰も止めるものが無い呪われた教皇にしてはあまりにも甘い措置だと自分でも思ったが、其処までしてはまるで若い娘を持つ父親が娘の彼氏に辛く当たるような物だと言われて少し配慮したのだ。

「どれ、シュラよ。その****と言う猫を連れて参れ」
 なおも逃れようともがくかのんを大きな掌で包み込み、抱きしめながら教皇は言った。

 親ばかと言われてもいい。たとえ猫とは言えかのんはわたしのもの。その大事なかのんが好きになった相手とは言え、私のかのんにふさわしい男かどうか見極めてやる!

 いつのまにか父親の気分になってしまっている教皇にシュラはかける言葉も無く、猫部屋に当てている小部屋に****を迎えにいった。

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あきゅろす。
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