山茶花の夢小説
にゃんこものがたり番外編 10

 なんだか、からだがおかしいよ。
 体が熱くって吐く息も、ものすごく熱い。
 サガぁサガぁ助けてよぉ…かのんしんじゃうの?

「にぎゃぁあぁぁっ!」
 今まで聞いたことの無いような声で叫ぶと、かのんは枕にしていたサガの腕から飛び出した。
「…な…なんだ?…しっぽでも踏んでしまったのかい?」
 サガはまだ眠たげな声で、それでも身を起こして仔猫が飛び出していった方を見た。そこにはまるで自分の尻尾を追いかけるように、ドアの前でぐるぐると回るかのんの姿があった。今まで聴いたことの無いような低い声で吼えるように鳴きながら気が狂ったようにぐるぐると走り回っている。

『からだがへん…足の間が熱くって心臓が足の間に移っちゃったみたいにどくどくいってるよぉ…。からだ中が熱くなってる…かのんしんじゃうの?かのんしんじゃうの?サガぁたすけてよぉ…さがにあいたいよぉ』

 ひとつ宮をはさんだ磨羯宮のリビングで猫ベットに丸まって眠っていた****がピクりとひとつ身じろぎして、ふと顔をあげ空気の匂いをかいだ。

「…おいおい…お前はまだ一歳にもなってないだろうに…もう発情期に入ったのかい?」
 サガは夜の闇よりも深いため息をつきながら、額に落ちかかる髪の毛をかき上げぐるぐる回る仔猫…いやおんなになってしまった愛猫をみつめている。
「朝になったらシュラの奴に相談してみよう…。このままではとても眠れん」
 自嘲気味な苦笑をこぼして、駄目もとで名前を呼んでみるが当然のようにスルーされる。
「かのん、かのんこっちにおいで。ベットでもう少し眠らないか?だっこしてあげるよ」
『いやぁ!からだがあついのぉ、とてもねんねなんてできないよぉ』

 赤ん坊の悲鳴のような声をあげてぐるぐるまわっている猫は、こちらの事など目に入ってない。
「お前も・・・本当のカノンのように私を置いていってしまうのかい?」
 
 サガはひとり、淋しげな呟きを漏らした。


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あきゅろす。
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