山茶花の夢小説
にゃんこものがたり番外編 9

「言いにくい事だが、オレの所に預かりものの雄猫がいる。…間違いが起こってからでは困るので、かのんちゃんをオレの所へは寄越さないでいただきたい」
 主の肩の上でくーくーとちいさな寝息を立てていたかのんは自分の名を呼ばれた事に気が付いたようで眠たげな目を開けてシュラを見た。
「いやに都合よくかのんがいなくなった途端にアフロディの奴がご機嫌伺いに来たと思ったら、そういうことか。…あいにくとこちらも、書いても書いても終わらない書類に音を上げたあいつが私とバトンタッチした直後だったがな」
 教皇はくくくと含み笑いしながら手付かずのまま冷めてしまった薔薇の香りのするティーセットを横目で見た。
 その視線にこの場で何が行われたのかをありありと見て取って、ストイックなシュラは目を伏せにゃぉんと可愛らしい声で啼く仔猫に視線を合わせた。

『さっきの男の人からなんでサガのにおいがしたんだろうね?さがに聞いたら教えてくれるかしらん』
 
「よかろう。かのんにはまだ早いと思うが、発情期が来てからでは遅いからな」
「ありがたい・・・。今まで雌に興味を示した事が無い猫なのだ。繁殖用にも使えなくて飼い主に疎まれてオレの所に来たくらいなのでかのんの片思いにならないか心配だ。懐いてはいたようなのだが…」
「くく…こいつは基本的になつこい奴だからな。抱いてもくれん男に恋焦がれるのも哀れなものよ」
 教皇が誰かに想いをはせたように仮面をつけた頭を持ち上げて遠くを見た。シュラには教皇の目に誰が映っているかを察したが口を挟むことはせず静かにたたずんでいた。
「…アフロディにも言っておく。かなわぬ想いに身を焦がすのはお前だけで充分だろうとな」
 含み笑いを交えて教皇はそう言うと身を翻し、シュラは一礼してその場を去った。
 
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