山茶花の夢小説
にゃんこものがたり番外編 7

「この事は教皇にも伝えておく。以後気をつけてくれよ」
「ふふ…わかっているよ。仔猫の貰い手探しに駆けずり回る気は無いからね」
 シュラはにっこりと守る気の無い事など見え見えの約束をするアフロディーテに見送られながら、足取り重く教皇宮を目指す。

 どう考えてみてもアフロディーテは自分の逢瀬のために邪魔なかのんがそこらをうろついているのを、これ幸いと磨羯宮の方角へ行かせたのに決まっている。シュラが内緒で雄の成猫を預かっている事など、百も承知の上に違いなかった。
 チャンスさえあれば、何度となく同じことが繰り返されるのが目に見えている。

 そうこうしているうちに、やがてかのんにもさかりが来て、自分より3倍も大きな男にのっかられる事になるのが目に見えている。預かりものとはいえ、人嫌いで猫嫌いの気難しい猫、おまけに長い血統書を持つ希少種の雄猫には帰る場所が無かった。
 もともとの飼い主にさえあまり懐かず、雌猫を傍にも寄らせないので繁殖に使う事も出来ない持て余し者であったのだ。

 希少種と言えどもう大人なので売り物にもならず、処分すら考えていると言う飼い主を見かねてシュラが預かる事を申し出た高貴な猫は、そんな事にでもなれば今度こそ本当に処分されてしまうだろう。
 その事もあいまってシュラの歩みをさらに遅らせている。

 いくら毒薔薇の花粉を中和させる薬剤を全身が白くなるくらい撒かれたとしても、致死性の毒をもつ薔薇を踏みしめて歩くのは気持ちのいいものではなかった。
 バスケットを壊す勢いで暴れ回っていた仔猫までが妙に静かだ。シュラは胸騒ぎを覚えて歩きにくい道を歩む足を速めた。

『なんであの人からサガの匂いがしたんだろ?…サガは「さが」にあったらどんな顔するかな?それに、もしもサガが猫になったとしたらきっと「さが」そっくりになると思うんだけどな♪』
 シュラの心配をよそに暴れ疲れてうとうとしているかのんはとろとろと夢心地の中で今日あったばかりの大人の男の猫と最愛の飼い主の姿を重ねてみてはうっとりと微笑んだ。


##clap_comment(拍手ください!)##
 

[*前へ][次へ#]

48/65ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!