山茶花の夢小説
にゃんこものがたり番外編 4
 
狭い穴の中をわくわくしながら通り抜けると、磨羯宮の中に出た。
『しゅらぁ〜、いないのぉ〜?』
 ごそごそと辺りを見回しながら進んでいくと。

『ここの主のことならいないよ』
 低くてよく通る声がした。

 途端にかのんのしっぽがぶわっと逆立つ。
『だ…だれかいるのぉ?』
 おそるおそる振り返ると、かのんがここへ来たときいつも使っているリビングの猫ベットの方からくすくすと可笑しそうに笑う声が聞こえてきたので、体を低くしてそちらに向かう。

『ごめんごめん。…脅かしてしまったか』
 まだ少し笑いをにじませた声で話しかけてきたのはかのんが見たことも無い豪華な猫だった。
 灰金の柔らかい被毛に青紫の瞳。ゆったりとしたしぐさはいかにも長い血統書を持った高価な純血種を思わせる。
『何でここにいるの?しゅらは?しゅらのねこなの?』
『そんなに一辺に聞かれたら答え切れないよ。それに順番が逆だ。私の家人はここの人間じゃない。それに居場所は私も知らないよ。…なぜ此処にいるのかというと、私の家人が新しい猫を入手してその猫と私は折り合いが悪かったから、ここに預けられたからだよ』
 猫ベッドの周りを体をつっぱらかせたままぴょんぴょん跳び回るかのんを優しい目で見ながらその猫は答えてくれた。 

『…さびしくない?』
『大丈夫だ、私は食事と寝床があれば一人でも平気だよ』
 野良生活など決して経験した事がなさそうな豪奢な毛並みを見ながらかのんがたずねると優しく答えてくれた。
『おうち、帰りたいと思わないの?』
 サガの顔を思い浮かべながらかのんが聞くとやはり静かな声で答える。
『元いた家には、もう新しい猫がいる。私が帰っても居場所が無いよ。それに、ここの人間も良くやってくれている。…しかも、今日はこんな可愛い子にも会えた。お嬢ちゃんお名前は?』
『…かのん…』
『かのんちゃんか。可愛いお名前だね』
 もじもじと恥ずかしそうにかのんが答えるとその猫は自分の名前は「****」だと言った。
『わかんないよ。もう一度言って?』
『だから****だよ』
 泣きそうな顔で首をかしげるかのんに根負けにた****はため息をひとつつくと困ったように笑った。
『外国の言葉だから、かのんには難しいかな?だったら、好きな名前で呼んでいいよ。なんて呼ばれても其れに返事をするから』
 かといってあまり恥ずかしいのはイヤだよと笑う相手に対してかのんのしっぽはピィンとなった。

『だったら、「さが」って呼んでいい?』

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あきゅろす。
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