山茶花の夢小説
にゃんこものがたり番外編 2

 茨のつるとつるが絡まりあって、ぽっかりと空いた小さなスペースは毒薔薇の花粉からもその香りからも隔絶された安全な空間だった。

『ん…少しきゅうくつだけど通れないこともないかな』
 ところどころに飛び出した小枝が仔猫の柔らかい毛にからまってくすぐったい。
『うふ…かのんがこんなところまでいったってきいたらサガはおどろくかしらん』
 ごそごそと茨のトンネルを通りながら薔薇のつるごしに空を眺めたりしながらかのんはごきげんだった。無意識のうちにごろごろのどが鳴って、自慢の長い尻尾がゆらゆらと動き出す。
『おんもにでるのはひさしぶりかな?いつもはサガのお部屋からでるときはサガのお洋服の中に入ってつれてってもらってたから、自分の足で歩くのひさしぶりかも?』
 ちいさな仔猫の足でしたしたと歩くには教皇宮と双魚宮の間は結構な距離があったが、安全な茨のトンネルの中をあちこちみまわしながら歩くのは楽しかった。特に目的があったわけでもなかったが、自分の足で歩くのが楽しくて長い石段も苦にはならなかった。
 しばらくすると双魚宮に着いたが、主たるアフロディテが農作業中は其れに習うのか、従者も姿を見かけなかった。宮の中央を貫くメインの回廊にもそこここに毒の無い薔薇が生けられており、通り抜けるものの心を癒す気遣いがされている。
『アフロディテはどこいったのかな?』
 自分と入れ違いに教皇宮に向かった魚座の聖闘士の姿を探してぐるぐると回廊の中を探して歩いたが、居住空間にはアフロディテの小宇宙で封印がしてあり諦めて次の磨羯宮を目指すことにする。

 双魚宮から磨羯宮までの道のりは、長い石段しかなかったが行く手を阻むような大きな裂け目が一杯あった。シュラのエクスカリバーの切れ味の冴えだったのだが、かのんの前ではにこにこといつも笑っていて、よく美味しいものや面白い玩具なんかを持ってきてくれるいい人がこんな荒っぽい事をするとは思えなかった。
 かのんはマリのように弾んで大きな裂け目を跳び越しながら、こんな悪い事をする人はサガがやっつけてくれればいいんだと思った。

 そして、その磨羯宮で運命的な出会いをする…。

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あきゅろす。
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