山茶花の夢小説
にゃんこものがたり   その6
 「まったく、面倒な事は皆私に押し付けるのだから」
 溜息をつきながら浴室から出てきたサガは、温かい湯で絞ったタオルで意識のない少年の体を拭いてやった。涙に濡れた頬を拭ってやる時には良心の呵責を覚える。己の出した物と少年自身の盛大な吐精にまみれた下腹部には少し嫌悪を覚えるが、綺麗にふき取ってやる。
 
「さて、これでは当分目が覚めないだろうね」
 やれやれと立ち上がったついでに、ふとベッドの下に目をやった。

 ベッドの下の薄暗がりに、ちいさいまんまるな碧い目がふたつ。

「そんなところにいたのか、かのん。怖かったろう…もう怖くないからこっちへおいで」
「しゃーーーっ!(いやだぁ!こわいの!こっちこないでぇ!)」
 ちいさなからだを精一杯逆立てて、威嚇してくる仔猫にサガは成す術がなかった。
 
 仕方ないのでかのんは置いといて、ベッドの上でもう一人の自分に散々玩具にされて意識を失っている少年の体の傷を改め癒しの小宇宙を与えてやる事にする。
「…酷い事を。己の欲望を満たす為ならここまでせずともよかろうに」
『フッ、何を偉そうな事を。お前はどう思ってるかは知らんが、私が発散させてやってるからこそお前は君子然と振舞える事を忘れるな。我々は同じ体を共有しているわけだからな』
「だからと言って、デスマスクには何のかかわりもないことだろう」
『(私だけの性奴を失ったのは誰のせいだ。私に抱かれるのを喜んでいた私だけの)』
 
 普段の、何事もスムーズにこなすサガにしては癒しの小宇宙を練るのがたどたどしかった。
「私はどちらかと言うと攻撃型なので、あまり相手を癒してやったりする事が得意ではないのだ」
 あの子は得意だったのだがな。よく修行で傷ついた私の体を治してくれた物だったが…サガが優しい目をして言った。

『あいつを殺したのは誰だ!冷たい水牢に閉じ込めて海に沈めてしまったのは誰なのだ』
 
 荒々しい言葉で、同じ声がののしる。

「私とて死なせるつもりなどなかったわ。少しお仕置きを与えるくらいの感覚でしかなかったのに、まさか死んでしまうなんて…」
「にい(さが)」
 ベッドの端に腰掛けて、少年に癒しの小宇宙を与えていたサガの足下に仔猫が顔を出していた。

「やっと出てきたね。ここはデスマスクに譲って、私たちは違う所で眠ろうか」
 かのんを懐に抱き締めると、サガはそっと教皇の私室を後にした.

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