山茶花の夢小説
にゃんこものがたり   その3
「へぇ…あんたが猫なんぞ飼うなんて、どういう風のふきまわしなんだ?」
 ベッドの端に腰掛けて脚をぶらぶらさせていた少年が目聡く、ソファーの上で眠っている小さな仔猫に気が付いた。

「拾ってきたのはアイツの方だ」
 長い漆黒の髪を邪魔くさそうにかきあげて、男は物憂げに告げる。
「ふ〜ん、可愛いなコイツ」
 少年はまだ眠そうな仔猫を抱き上げて頬ずりした。
「ははっ、やらけぇなお前。なぁ、コイツを俺にくれよ」
 可愛がるからさぁと強請られるが、男の答えはあっさりしたものだった。

「無理だな。そいつは、私も気に入っているのだ」
 そんな事よりこちらへ来いと、寝台の中へ引きずり込まれる。
「よせやい!アンタのはでかいんだから、そう何度も相手できっかよぉ」
 力任せに暴れてみても、瞬く間に取り押さえられ背後から貫かれる。
 既に一度情事をこなしていた少年の菊門は、彼の意思とは裏腹に簡単に男の怒張した一物を呑み込んだ。

「くあっ!いてぇってばよぉ…。急に動かすなよ」
 シーツを握り締め荒々しい抽送に耐えていると、首筋をきつく噛まれて思わず声を上げてしまい、自分で自分に赤面する。
「フッ…顔に似合わんかわいい声を出す」
「笑うなっ!俺を笑う奴は!」
「どうすると言うのだ?」

「小僧とは言え、男の身でありながら、尻に同じ男の一物を突っ込まれてあんあんよがっているような奴が、この私を一体どうできると言うつもりだ?」
 少年の薄い尻肉を掴み締めて、激しく穿ちながら毒を吐きつける。

「答えてみろ!デスマスク!」
「…ちくしょう……ちくしょおお!」
 男の高笑いと少年のすすり泣く声が、部屋の空気を染めていった。

「私は、これから潔斎の時間だ。戻ってくるまでには部屋から出ているように」
 冷たく言い放って男は姿を消した。

「にゃ〜ぅ?(大丈夫?)」
かのんはぼろきれのように寝台の上に横たわる少年の指先を小さな舌で、心配そうに舐めた。
「う…」
「にぃ?(平気?)」

「…わかってたんだよ。散々人を弄んでおきながら、終わったらすぐに部屋からたたき出すような奴だよ」
 お前の飼い主様はよと、仔猫に語りかける。
「にゃ!(さがはかのんをだっこしてねてるよ)」
 少年の頬に流れる涙を仔猫が小さな舌で舐めてくれた。
「よせやい…くすぐったいよ」
「にい(もう、泣かないでね)」
「お前がうらやましいよ。あいつは他人の気配があると眠れんとか言って、夜中でもベッドの相手を叩き出すけど…おまえは別なのな」
 仔猫の頭を撫ぜてやると、眼を細めてゴロゴロ喉を鳴らしだした。
「み(きもちいいよぅ)」

 仔猫の愛らしい姿を眺めていた少年の眼に一瞬、兇悪な殺意の影が閃くが軽く頭を振ってやり過ごす。
 
 喩え仔猫をなぶり殺しにして鬱憤を晴らした所で、今度は自分が同じ目に…いや、3倍増しくらいの酷い目にあうことはわかりきっていた。一度自分の物と決めた物を奪われると烈火のごとくに怒り狂うのだ。

 だいいち、無邪気に安心しきって身をゆだねてくる小さな命を傷つけるのは気が進まなかった…。
 かわりに、にやりと笑うと仔猫の頭を軽くぽんぽんと叩いて囁く。
「うまいこと立ち回って殺されるんじゃね〜ぞ。あいつは、いつ何時機嫌が変わって怒り出すのかわかんね〜からな」
「にゃあ(さがはかのんをかわいがってくれてるよぉ)」
 いつまで続くかなと厭味を言いながら身支度を整え、かのんをひょいっと抱き上げるとほっぺたにキスをした。
「じゃあな、お前でできた壁のシミなんざ掃除させられるのはまっぴらだからな」
 こんど玩具持ってきてやるよと手を振り、仔猫が付いてこないように注意して、そっと夜の闇に中へ姿を消した。


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