山茶花の夢小説
紅い薔薇のこと  その3
「で、何で俺なわけ?」

 開口一番こう来るとは思わなかった。確かに、人選としてはいいと思ったんだけど、そう簡単にはいかないみたいね。そりゃぁ一度死んでるわけだし、思い出したくない思い出っていうのもあるわよね。

「ま、いいけどね。別に隠してることじゃなし」
 第一皆知ってる事だから、Dr.サエラが知ってても問題はないでしょと肩をすくめて嗤う。

「今じゃ『サガの乱』って皆呼んでるし、登場人物ってなぁ皆生き返ってるしで、済し崩し的に無かった事みたいになっちまっているけれど、元はと言えばシオンさまが『次期教皇にはアイオロスを』と仰せになったのが発端さ」
 アイスコーヒーをずるずる音を立ててすすりながら、話してくれるのはいいけどお下品よ。
「次期教皇って?シオン様はあんなにお若いでしょう?」
 私は常々思っていたことを口にしたわ。前から、なんであんなにお若いシオン様のことを爺さん扱いするのか疑問だった。
「ははは、其処から説明しなくちゃなんねぇのか。あの人は本当は243歳なんだぜ。いまじゃ、『光り輝く18歳』の肉体を得てっけど、13年前はほんとによぼよぼの爺だったのさ。誰かに責任と重責を押し付けたいくらいにはね」
 よぼよぼ…とてもそうは見えないんだけど…。
「おやぁ、信じてねぇな。顔に書いてあるぜ。俺の話が信じられねぇってんなら、ここで終わりだ。サガはシオン教皇を殺して成り代わり地上を手に入れようとしたけど、アテナと青銅のガキどもに追い詰められて自害した…ってのがいわゆるサガの乱って奴だ」

 んもぉおっ!デスマスクさんのいぢわる!そんなそこら辺の本に書いてあるような事が知りたいわけじゃあないっていうのわかって言ってんでしょう!
「けけけ。俺は間違った事は言っちゃあいねぇぜ」
 ひらひらと舌先を動かして嘯くデスマスクさんに、私は思わず眉間を揉んでいたわ。


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あきゅろす。
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