山茶花の夢小説
らっぱのマーク 8

からん♪と、入り口のドアにつけたカウベルが可愛らしい音で鳴った。アルデバランさんに戴いたブラジルみやげ…ということになってるけど、ほんとは『アルデバランさんに戴いたのと同じものをムウさんが買ってきて交換したもの』なのよ。
 わざわざブラジル中の露天商をまわって同じものを見つけてきたムウさんの背負った迫力に、とてもお断りなんていえなかったわ。
「同じものを買ってきました。これと交換してください」
 言葉の上ではとても丁寧なんだけど、無言のオーラがひしひしとこちらに迫ってくるのよ。あれが小宇宙というものだったら、私はとても聖闘士にはなれないわね。
 私が黙っていると、不服だと思ったのか(本当はビビって声も出なかったんだけど)あれやらこれやらおまけしてくれるので本気で申し訳なくなってアルデバランさんのおみやげを渡して、おまけにくれようとしていた数々の細工物をお返ししようとしたのだけど、今度はあちらが受け取ってくれないのよぉ。
 アルデバランのおみやげはわたしにはそんなものより価値があるのですって、気持ちはわかるけど…押し問答してて、もしアルデバランさんが通りかかりでもしたら元も子もないのでひとつだけ。シンプルな緑色のひすいのペンダントを頂く事にしたの。誰かさんの目のような深い緑の…。

 もっとゴージャスな宝石を使ったものや、素晴らしい細工の宝飾品なんかもあったんだけど、私にはこれで充分。
「そんなものでよいのですか?遠慮なさる事はありませんよ。無理を言っているのは私の方なんですから」
「うぅん、これでいいわ。…いいえ、これがいいの。だって私に似合うと思わない?」
 そう言うと、ムウさんの目がふいに優しくなって肩の力が抜けたように見えたわ。

「いいえ、よくお似合いですよ」
 にっこり微笑んでくれるムウさんが、私には数々の宝飾品なんかよりずっと綺麗に見えたの。


                   終わり

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あきゅろす。
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