山茶花の夢小説
らっぱのマーク 7

「はい、今日はどうしました」
 に〜っこり。もはや手馴れたものね、ご本家には敵わないけど。

 わたしの前でもじもじとシャツの裾をもみくちゃにしているのは獅子座のアイオリアさん。あ〜あぁ…あんなにしちゃったら、あのシャツもう着られなくなっちゃうんじゃないかしら?人事ながら気になっちゃう。
「…その…折り入ってドクターにお聞きしたいことがあるのだが…」
 ピーンときちゃった!これはこれはもしかして…。
「あの、男性のドクターの方がよければお呼びしましょうか?」
「?」
 アイオリアさんの眉毛が寄せられ、眉間にしわがよる。
「…女性には聞きにくい事なんでしょ?」

 その言葉を聞いたとたん、まるでBON!という音が聞こえそうな勢いでアイオリアさんの顔が赤くなった。
「…いやいやいや…むしろ、女性でないと困る…というか、まぁ…男でもいけないことは無いが…やはりオレとしては女性の方にお聞きしたい!」
 拳を握り締めて力説するアイオリアさんをあっけにとられた顔で看護士さんたちが見ている。…一番困っているんはワタシだわよ…。

「じゃ…じゃあ、女性に聞きたい事というのはなんなのかしら?」
 まさか堅物で有名(融通が利かないとも言う)なアイオリアさんからセクハラ発言がとびだすとは思わないけど、一応は心の準備をしとかなくちゃあね。なんたって相手は黄金聖闘士なんだし。
「その…サエラ…さんはオレの兄、射手座のアイオロスをご存知だと思うが、その…兄は14で死んだのでそのまま14で甦ってきているわけなんだが、それで…オレの方は順調に20歳を迎えたわけで…その」
 しどろもどろになりながらも、身振り手振りを交えて訴えてくるんだけど正直何を言いたいのかわからないわ。
「…ええぃ!面倒!」
 内心うんざりしてたのが顔に出たのか(いけないいけない、Dr失格ね。やはりご本家にはかなわないわぁ)アイオリアさんがはっとした顔をして、急に立ち上がったの。

 とっさに身構える私たちに向かってぺこりと頭を下げたわ。
「驚かせてすまない。…ほんとは、オレと兄貴ではどちらが一人前の男といえるだろうかという事を聞きたかったのだが、話しているうちに俺自身がまだまだ未熟な青二才である事がわかった。14歳当時の兄より未熟なのだから、年の上ではオレのほうが上とはいえ人間的にはまだまだなのだろう。もっと修行しろというわけだな」
 ははっと情けなさそうに笑うアイオリアさんに、私たちは何も言う言葉が無かったわ。私に聴くまでもなく自分で言って自分で納得してしまったんだもの。
 獅子座の人は天然さんが多いというけど、この人は守護星のままにほんとの天然さんなのね。

 と、言う事は…お兄さんのアイオロスさんは守護星の影響をうけてないのかしら…?たしか…射手座の人の性格は…。

 私は来た時と打って変わって、にこにこと帰っていくアイオリアさんの背中を見ながらそんな事を考えていたの。
 
                    終

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