山茶花の夢小説
らっぱのマーク 4
「やっほ〜サエラちゅわわぁん、ごきげんいかが?」
 軽やかなノックの音とともに来室したのは、まばゆいばかりの黄金の巻き毛の持ち主・蠍座のミロさん。

「どうされました?どこか痛いところでも?」
 どう見ても元気いっぱいの相手に向かって言うコトバじゃないとわかっているんだけど、この人たちは本気でわからないから。
 
 この間も珍しくアルデバランさんが来室したと思ったら、反対側に曲がった小指を見せてきて。
「いやぁ、しくじっちまったなぁ」
 豪快に笑うのはいいけど、これって酷く痛いはずよね。
「他のところは小宇宙を昇華させてなんとかなったんだが、俺には美的感覚が乏しくてなぁ。骨折とかは下手に繋ぐとあとあとやっかいだとムウに言われてな。面倒を掛けるがよろしく頼む」
 面倒も何も、それがお仕事ですからかまわないけど。他のところって…。
「なに、たいした怪我ではなかったのだ。少し腕がもげそうになっただけだ。岩を砕くのくらい聖衣なしでも軽いもんだと思ったのだが甘かったわ」
 わっはっはと、笑う全開の笑顔にめまいを覚えてしまったわよ。くらくらしながら骨折の処置をして差し上げたら、添え木をつけて包帯で固定しただけであっという間に治ってしまったのも驚きよ。
「やぁ、さすがにサエラ先生は腕がいい。アテナが御推薦されるだけのことはある」
 うわっはっはと笑いながら礼を言われて呆然としたのを覚えてるわ。

 だから、目の前の金髪美形にもどこか具合の悪いところがあるのかしらんと思ったんだけど、違ったみたい。
「あんがと〜。でも、今日はどこも悪くないのさ。今日はね、こないだのお礼だよ」
 はぁい、プレゼントと差し出された色とりどりの大きな瓶入りキャンディに目の前をふさがれたわたしが困っていると、
「あ、ごめん。女の人には重かったな」
 にしゃぁっとせっかくの美形が崩れるように笑って、傍らのテーブルの上に大きな瓶を移動させてくれた。
 カノンさんとミロさんはおなじような笑い方をする。せっかくのきれいなお顔を惜しげもなくくしゃくしゃにして、ガキ大将みたいに笑うの。ちょっと好きになってしまいそうな魅力的な笑顔だけど、背後の方たちが怖いから触らぬ神に祟りなしと決め込むわ。

 異次元に飛ばされるのも、絶対零度で凍らされるのも勘弁だもの。

 そういえば、絶対零度で思い出したけどカミュさんに御礼はしたのかしら。一応仕事の一環でしかない私たちよりも、わざわざあの長い石段を降りてきてくれたカミュさんの方にお礼するべきだわよね。

「やだなァ〜、俺がカミュをないがしろにするわけないじゃん。あいつは甘いのあまり好きじゃないというから、はっかのキャンディにしたのさ。これと同じ瓶に全部はっかのキャンディがはいってんの持って行ったよ。」
 一瓶全部はっかのキャンディかぁ。飽きちゃいそうな気もするんだけど…あ、まって。

「シベリアの雪原を見ているような気がするってさ。けっこう喜んでくれたよ」
 白くて半透明と不透明の間くらいの色合いの瓶いっぱいのキャンディがカミュさんには懐かしいシベリアの雪原に見えたのね。

 カミュが喜んでくれたので、俺もうれしんだと笑うミロさんが思いっきりうらやましくなってしまったわ。


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