山茶花の小説
3000HITリクエストでロスカノ その9
「あれが、サガだって?」

 穏やかで優しく、誰にでも親切で神のような男と呼ばれた親友と、目の前の兇悪な小宇宙を隠しもしない男では重なり合う部分など見つかるようには思えなかった。
 ただ、13年前にいとけないアテナを殺害しようとしたあの時にチラリと見ただけのあの男に似ているような気がする。あのときは気が動転していたから本当に本人なのか証明できなかったが、あの時の紅い目をした恐ろしい男に。

「あぁ、あんた知らね〜んだったな。俺等に取っちゃあ、あっちのサガの方が身近なんだが」
 平然と口にするデスマスクを、信じられない物を見るような目で見てしまう。
「ちっ!誰もアンタに教えなかったのかよ…。一番訊く権利があるだろうに。つまりよ、あいつは双子座のサガの二重人格の片割れなんだ。あいつが教皇を殺して成り代わり、アテナを殺そうとしたんだよ。其処をアンタが阻止したわけだろ。その後成長したアテナと青銅どもに敗れて自害したわけなんだが、聖戦が終わって、サガを蘇らせようとした時にどうしても2人を分離させる事ができなかったのさ。どうすべぇとしたときにあのカノンの奴が、自分が責任を持つから2人とも蘇らせてやってくれと願い出たのさ。もしも再び悪心を抱く事があれば、刺し違えても自分が倒すからってね。」
「刺し違えても…」
「そうよ、カノンの奴は聖戦の時に敵の幹部と心中したのさ。青銅どもを通す為に自分を犠牲にしたのを認められて早い段階で生き返っていたらしい。俺も嘆きの壁での事を評価されて生き返らせて貰った時に、青銅どもに集られているあいつを見てビビッたものなぁ」
「星矢たちにか」
 懐かしい名前に遭遇して目を細める。
「そう。青銅たちもカノンの肩を持ったので、サガは2人とも蘇ってきたのさ。もっとも最近は黒髪の方はあんまり双児宮から出てこないがな」
 一応遠慮しているんだろうとデスマスクは笑う。

「俺らも偽者の教皇時代はあいつのお世話係だったのを開放されて、今ではカノン独りで身の回りの世話から性欲処理までこなしてるよ」
「…」
「ま、あっちのお世話が一番大変なんじゃね〜の。ただでさえでかくて性欲も強いのが二人分なのに、この間から出張してたもんだから二人とも溜まっちまってて、多分休暇を貰ってもあの分じゃその間中ずっとハメられっぱなしなんじゃね、あいつ」
 折りしも双児宮では、一際強く突き上げられたサガだと思っていた男が兄の胸へ崩れ堕ちた所だった。ぐったりと己の胸に身をあずけてきた男を、黒髪の男が酷く優しい手付きで愛撫してやっているのが、なぜか腹立たしい。

「昼間のも十中八九、サガの執務室の前を通りかかった所で拉致されてハメられちまったんだろうさ。散々嬲られて気をやっちまったか、腰が立たなくなっちまったんだろ」
 で、あいつが代わりにシオン教皇にサインを貰いに行ったときにあんたがいて話がややこしくなったと、いうことさと、肩をすくめてデスマスクは話を纏めた。

「…だが、サガには兄弟はいない筈だが」
「あんなにそっくりなのに?」
 首をかしげるアイオロスにデスマスクが畳み掛ける。
「あ、海底神殿で育った生き別れの兄弟とか」
「15でスニオン岬に幽閉されるまで聖域にいたそうだけど?双児宮の地下室に閉じ込められてたとは言うけどね」
「閉じ込められてただと?」
「そ、8歳でサガが黄金聖衣を賜ってから15歳で下らん兄弟喧嘩で水牢に幽閉されるまで双児宮の地下室に閉じ込められてたんだとさ。子供の頃の俺が怖いと泣いた、呻き声やら泣き声の正体は自分だと謝られたわ」

「俺には、サガのやつ兄弟なんかいないって言ってたんだけどな」
「ふ〜ん、ひょっとしたらアンタたら兄弟に嫉妬してたのかもね。あんたんとこは弟のアイオリアも黄金聖闘士だろ、なのに自分の弟は自分が不慮の事故ででも死なない限り表に出してもらえないんじゃねぇ。結局死ぬまで出してやるつもりはないって言ってるようなものじゃんよ」
 そりゃグレもするし、おかしくもなるわなとデスマスクは嗤う。

「…そんなこと…全然知らなかった。あいつとは…サガとは気があって、よく一緒に修行したり執務をこなしたりしたのに、弟を地下室に閉じ込めてるなんて話は一度もしたことはなかったぞ」
「自慢できる話じゃないしな。大体あんたの性格じゃあ『そんな事許されるはずがない!』って猪突猛進で教皇まで突っ込んで大事にするだろ。それでいい方向に転べばいいけど、もしも災いの種は幼いうちに摘むべきと、弟を処刑されちゃたまらんと思ってたんじゃないかな」
 
 アンタ信用されてなかったんだよとデスマスクはまた嗤った。

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あきゅろす。
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