山茶花の小説
とあるなつのひのあさ(ちょっと小スカトロ注意)
もぞもぞと鼻先をかすめる髪の毛を煩そうに手で払いながら、サガは眼を覚ました。先ほどの安らかな気分はまだ続いていて、なんだかとても幸せな気持ちだ。
だが、それも長くは続かなかった。次第にはっきりと意識が澄み渡るにつれて、自分のおかれた状況がはっきりしてきたからだ。
ずっと鼻先を掠めていた髪は色目からして、自分の物ではなかった。温かいのも懐かしい鼓動も、肌が直に触れ合っているからだし、脚は抱き枕を使うように抱え込み、両腕はしっかりと目の前の肉体に回されている。
なによりサガを困惑させたのは、下腹部の違和感。熱い媚肉に包まれてえもいわれぬ快感が襲う。
「…私は…?」
ごそごそと身動きする感触の後で弟の声がする。
「サガ、眼が覚めたのか?…だったら、早く抜いてくれ。緊急事態なんだ。」
「…緊急事態とは物騒だな」
体を入れ替えようと身動きした途端、感じてしまったらしい鼻にかかった喘ぎ声がした。
「は…ぁん…ばかぁ…おっきくしてるんじゃねえよぉ」
「カノン?」
「早く抜けってぇ」
言葉の割りにカノンの中の媚肉はサガに絡みつき、きゅうきゅうに締め上げてくる。
堪らずにカノンの体をわけもわからないまま後ろから突き上げると、より深く咥え込んでしまったカノンがびくびくと身震いした。
「あぁぁ…早く抜けって…頼むから」
「無理を言うな。きつきつに締め上げているのはお前の方だろう。こんなに吸い付いてきてるのにのにホントに抜いていいのか?」
「くそぅ…気持ちイッ…」
「だろう?私ももう止まらん。動くぞ」
激しい抽送を繰り返すとカノンの体が弓なりに仰け反って嬌声を上げてよがり狂う。
「あぁぁ…もっと…おく…奥まで突いてくれ…あぁぁ」
「奥か、奥がいいのか」
「はぁん、気持ちいい」
「そうか、気持ちいいか?」
「んんぅん・・・きもちいいよぉ」
サガの手がカノンの腰を掴んで激しくグラインドする。たまらず、カノンの口から漏れる高い嬌声に一層そそられる。
「カノン…中に、中に出すぞ」
「ひあぁっ・・・サ…ガァァ」
サガの律動が一段と激しくなり、頂点が近い事を告げる。幾度も突き上げられてカノンの腰も激しく打ち振られる。
「くっ」
一際強く腰を叩きつけて、サガはカノンの最奥に熱い精を迸らせる。
荒い息をつきながら、やっとカノンは開放された。
愛しい弟の蜜孔から力なく萎えた肉棒をぬるりと引き出して、キスを強請ったサガは邪険に押しのけられる。
「カノン?怒っているのか?」
兄の疑問に答えもせず、カノンはゆらりと身を起こすと………洗面所に急ぐ。
独り取り残されたサガは、悄然と考え込んだ。
ずっとカノンに触れたかった
その体を抱きしめたかった
キスしたかった
…愛し合いたかった
でも、手を触れたら穢してしまいそうな気がして、触れることすら出来なかった。
もう既に一度この手を離してしまった。あれから13年も掛かってやっとこの手に取り戻したと言うのに、もう一度失うのが怖かった。
だがもうひとりの私は既にカノンと愛し合い、その体を手に入れたと私に自慢した。
たとえなかば力ずくで行われた行為でも、受け入れられれば同じ事だと嘯く。そして同じことを私にも強いられても、私にはどうしても出来なかった。
どうしようもない臆病者なのだ、私は。
拒絶されることが怖くて現状維持しか望めない。そんな事ではいつか破綻するとわかっていても、どうしてもその一歩が踏み出せなかった。
それがどうだ。
私の思惑など無視して、最初っから体を繋いだ状態から渡されたバトンは、当たり前のように次へと運ばれていく。
私のくだらないこだわりなど笑い飛ばして、明日へと、今まで通りの世界の続きへと私を運んでいく。
気が付けば、私は大声で笑っていた。
『どうした?とうとう頭がおかしくなったか』
「いいや、自分の馬鹿さ加減に気が付いたのさ」
くすくす笑いながら答える。私の中のもうひとりが私の身を心配しているのすら可笑しい。
「私はなんとつまらない事を悩んでいたのだろうな」
『今に始まった事ではないがな。まぁ、それに気が付いただけでも良しとしろ』
「…偉そうだな、お前は。だが、ありがとう。私は私でいいんだな。カノンがカノンであるように」
私の中のあいつが広い肩をすくめて見せるのが眼に見えるようだ。
『なにを当たり前な事を。今更な奴め』
「そう言うな。やっと気が付いたのだ、私は」
ひとしきり笑って気が済んだら、あいつは再び眠りの中へ還って行った。ほんとうなら、私もあいつも一人であるはずの存在。完全体を知ってしまった今としては、己の不完全さが目に付くけれど、今はまだこのままでいい。いつか…そういつかその日は来るだろうから。
「カノンは、遅いな…」
ふと、気付くとあれから随分と経ってしまっている。弟の身を案じて、洗面所へ様子を伺いに行く。
「カノン?どうかしたのか?」
ドアのノブに手を掛ければ何の手応えもなく開いた。
「…来るな!来ないでくれ…」
奥の方からカノンの声がする。
「来るなと言われても…大丈夫なのか?」
そっと覗いてみると、洗面所と手洗いの間のドアの前で座り込んでいるのを見つけた。傍によってみると、ツンと鼻を突く異臭とカノンの体の回りに広がる水溜りの正体に気付いた。
「来たらイヤだって言ったのに」
イヤイヤをするように頭を振って、両手に顔を埋めてしまった。
「…漏らしてしまったのか?」
ぴくり、とカノンの肩が震える。
「早く抜いてくれって言ってたじゃないか!サガの意地悪!」
「わかったわかった。私が悪かった。」
洗面所の隣にあるリネン置き場からバスタオルを何枚か持って来る。一枚をカノンに渡して床に流れた分を始末する。
「ほら、拭いてやるから立ちなさい」
いつまでも座り込んでるカノンを不審に思い、タオルを持って声をかける。
「ダメ…腰が抜けて…立てない…」
蚊の鳴くような声で告げると、真っ赤な顔で俯いてしまった。
(…かっ…可愛い…)
「風呂で洗ってやるから、おいで」
腕を取って立たせようとすると、下肢を濡らしているのが小水だけでないことに気付いた。カノンの下肢に絡み付いていたのは見覚えのある白濁。
「お前…漏らしながら…イッたのか?」
「ちっ…ちがう!俺はそんな変態じゃない!」
真っ赤な顔をぶんぶん振って懸命になって否定するのが怪しい。
「…ここまで辿り着いた所で、気が抜けて後ろからお前の…アレが流れ出して…その感触で…その…イッちゃって…そしたらもう止めようがなくて…おしっこも」
真っ赤な顔を俯かせてボソボソと必死で弁明する。その様が余りにかわいくてつい虐めてみたくなってしまう。
「どれ、見せてごらん」
返事も待たずに体を裏返せば、今までサガを愛していた肉色の蕾は過度に蹂躪されてより紅みを増し、内側から溢れ出るサガ自身の白濁に濡れて、ぞくぞくするほどいやらしい。無造作に指を差し入れてかき混ぜてやるとこぽ、とかわいらしい音がして奥から白濁があふれ出してきた。
「これは…奥までじっくりと洗ってやらなければいけないな」
くちゅくちゅと中で指を動かしながら独りごちれば、カノンは焦って振り返り一点を見詰めて呆然とする。
「…お前…昼間のサガだよな?」
「そうだよ。これからは、私もよろしく頼む」
半泣きで確認を取ってくる弟ににやりと笑って宣言する。
「さて、私の体もお前のおしっこで汚れてしまったことだし、一緒に風呂に入ろう。奥のおくまでじっくりと洗ってやるよ」
カノンはサガの一点から眼がそらせない。そこには昨夜あんなに啼かされた天を衝くカリ太の…
「…イヤだ…たすけて…だれかぁっ…」
力なくもがくカノンの悲鳴は浴室のドアの向こうに消えていった。
終
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