0097
※グリムジョーが浮気してそれがヒロインにばれましたというお話です。
「ほんっとうに良いの?」
「ああ」
彼はそう頷いて意地悪気に私にそれを渡した。
「痛いと思うんだけど」
「別に痛くねぇよ」
ピアス。
彼はピアスの穴を私に開けろと言う。無理って知ってるくせに。本当に理不尽よ、ねぇ?それとも何かの嫌がらせかしら。私は別に怒ってないのに。あんな事くらい、どうでも良いのに。
「俺が悪ぃんだ。本当に愛してるのはお前だけなのに他の女と現をぬかすなんてな」
「でも私別に怒ってないし。だって浮気の一つや二つで怒ってたら身が持たないもの。グリムジョーの人生はグリムジョーが決めれば良いわ」
素っ気無い言葉だと我ながら思う。でも私に対して謝罪の意を示すのに私にこんな事させるなんてそっちのがよっぽど無理難題を押し付けてるわ。私は怒ってない。怒ってないから体に穴開けるなんてやめようよ。ただでさえお腹にぽっかり開いてるのに。これ以上増やしてどうするの。というのが私の意見。
「さっさと開けろよ」
「嫌」
そう言ってそれをグリムジョーに投げた。それはカツンと音をたてて床に転がった。いっその事落ちた衝撃で壊れたら良いのにとも思ったけどそれは壊れていなかった。今時の物は皆頑丈ね。中国製はどうだか知らないけど。
「そんなに、怒ってるのか?」
「だから怒ってないから」
しつこいな、とグリムジョーの鼻を人差し指で押す。一瞬彼は顔を顰めた。いつもと同じ行動の私。結局、浮気して捨てられたらそこで終わりだとしか思えない私はそんなに冷酷でしょうか。
「なあ」
「何?」
「もうこんな事しねーから」
「うん」
「頼むから印を付けてくれねーか?」
「うん?」
印、ねえ?目に見えるものじゃないと安心できないのかしら。全く、お子様ね。人の真相心理なんて解かるはずがないんだから、見えたところで。
「なあ」
「良いよ、殺したげる」
死なら目に見えるでしょう。これで十分よね。それとも命が惜しいかしら。
「最期に一回抱きしめさせてくれ」
「それは嫌」
だって圧迫されて私が先に死にそうだもの。
意地悪ね/圧迫死は嫌だ@薄雲
20110528
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