0079
前世?前世で逢った事あるのか?
「覚えてないなんて哀しいな」
彼女は呟く。
「生きてる間の事なんて覚えてねぇよ」
本心。
「教えて欲しい?」
不可思議。
「ハッタリか?」
疑問。
「信じるか信じないかは貴方が決めて」
―――本当なのか?―――
「言えよ」
そう言うと彼女は一つ息を吐いた。
「前世でね、恋人同士だったのよ。貴方が私を愛しすぎて壊したの」
嘘か、真か、判らない。
「……」
それでも聞く。
「貴方が私を好きで、私が他の人を好きになったから、彼を殺して、私を殺したの」
「どういう事だ」
「私が、貴方を裏切ったから、貴方は私を殺したの。めった刺し。痛いなんて、そんな事忘れちゃった。痛すぎたのかもしれない。あの時は涙も出なかった。貴方はこれから何度でも私を殺すわ」
「本当なのか?」
「信じるかどうかは貴方しだい」
俺は、好きな女を破壊し続けるのか?
自問自答を脳髄で繰り返す。
結局答えは見つからなかった。
前世の事が思い出せずに。
真っ赤な液体の流れがおさまってきたところで、俺は彼女を持ち上げた。彼女の意識は朦朧としている。
死の間際に言った嘘だとは思えない。
「解んねぇ」
「でしょうね」
彼女は腕の中でふふっ、と微笑んだ。
前世A/ぐだぐだすぎる@薄雲
20110520
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!