0078
※グロイよ。死神ヒロイン。
彼女の腹から流れ出す紅い液体を見ていた。苦しそうにヒューヒュー鳴らせながら息をする彼女は特に表情を変えず俺を見ていた。俺と彼女は敵で、彼女は俺に斬りかかってきたから俺は彼女を斬ってやった。彼女は顔を歪めず、ただ無表情に斬られていった。そして現在も無表情で俺を見る。まるで斬られるために俺に斬りかかってきたかのような彼女に俺は好奇心と興味を示した。
「ねぇ、貴方の名前を教えてよ」
そう俺に問いかける彼女。どこか寂しそうな表情。何かを思い出してほしいかのような掠れた声。
「グリムジョー・ジャガージャック」
答えると同時に彼女の口元が緩んだ。少しの笑顔。どこか、懐かしさを感じた。何故だか解らないが。彼女はゆっくりと目を閉じた。
「そっか」
腹、痛いはずなのにそれについては何も言わねぇ。少し気に入らない。
「腹、痛くねぇのかよ」
そう彼女に言うと彼女は目を開けて俺を馬鹿にしたように無邪気に笑った。
「痛いかな。でも今はお腹よりも心が痛い」
気に入らない。ただその感情が彼女に対する思いであった。彼女の腹からはだくだくと液体が流れている。出血多量で死んでしまいそうだ。可哀そう。俺がやったのに、そんな後悔が俺の心の端に残る。未練も後悔も俺は嫌いだ。だから彼女の腹の傷を俺の服を破って押さえてやった。圧迫して血を止めようとする。真っ白な布は、赤色に染まる。彼女はきょとんと俺のほうを見た。俺は気付かないフリをして彼女の腹を見つめる。
「テメェ、名前なんつぅんだ?」
その問いに彼女は残念そうに笑って答える。
「そっか、覚えてないよね」
意味の解らない事を口にして名前を言わない彼女。覚えてないって、俺は彼女と今日初めて逢ったって言うのに何で覚えてるんだよ。確かに、逢った事あるような気もしない事は無いが。彼女を見た瞬間、嫌悪感と共に破壊衝動が起こったが。不思議な感覚に襲われたが。だが、死神なんて初めてみるのに何で知ってるんだよ。
「俺とテメェはどっかで逢った事あんのかよ」
そう言うと彼女は寂しそうに笑った。
「前世あたりでね」
前世@/寂しいんだ@薄雲
20110519
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