0065
俺の部屋には行ってきた従属官の彼女はいつもより数センチスカートを短くしていた。結んでいた髪も下ろしているし、何より唇が艶々している。
そしていつもの様に世間話を始める。
だが今日はいつもと違った。
「あのねグリムジョー、私ウルキオラが好きなんだ」
「それがどうした」
「どうしたって、何とも思わないの?」
俺は平然を装って言う。
ドクドクと急激に鼓動が増しているのに関してはノーコメントで。
「ああ、どうでもいい」
だなんて口先だけ。
実際、殴り壊してやりたいぐらいウルキオラが憎い。
「へえ…」
「で、何だ?」
「あ、そうそう、ウルキオラに告白したんだよ」
「え」
初耳だ馬鹿野郎!てか何で。
「そしたらオーケーだってさ。ダメもとで告白したのにウルキオラも私の事好きなんだって!やっぱりやってみないと解らないね人生なんて」
「お、おうそうだな」
少々動揺が彼女に移ってしまったかもしれない。
ダメだ、俺。彼女をさっさと引き離せ。
「でね、キスとハグはもうしたんだけど、何ていうの?それ以上がまだなんだよ」
やんなくて良い。
「で、俺に何を求めてんだよ」
「どうしたらウルキオラを誘惑できると思う?」
「知らねー、アイツの事なんか」
「あ、酷い」
「おら出てけ」
「ちょ、グリムジョー酷いっ」
「酷いのはどっちだっ!」
ついに俺はキレた。
好きな女に他の男との交際に関して相談されて嬉しい奴がいるわけがない。
何でだよ。
気付いた時には彼女を壊すくらい抱きしめていた。俺は力を少し緩め、でも逃げないように抱きしめてみる。
あったけーな。でも心臓はいてえな。そんで感情はつめてーや。
「グリムジョー?」
腕の中で困った表情を浮かべる彼女。
ああ、何でだ。何でウルキオラなんだよ。クソッ。むなくそわりーや。
「るせー、テメーは黙ってろ」
「でも」
「んだよ」
ウルキオラの事か?
「あの、グリムジョーには謝らないといけないんだよね」
ウルキオラと付き合ってるから無理とかそんなのか?
「言えよ」
我ながら冷たい声だったと思う。
「実はウルキオラと付き合ってるのって嘘なんだよね」
「は?」
どういう意味だ。
「実はウルキオラに“グリムジョーの事が好きなんだけどちっとも振り向いてくれないの。それどころか避けるの”みたいな事言ったら“それなら俺と付き合ってると言え。キスでもハグでもしたと言え。そうすれば嫉妬して向き合ってもらえるだろう”っていうアドバイスをくれたから実行しただけで…、なんていうのかな?押してだめなら引いてみろ?ってやつ?」
俺は酷く赤面した。
「じゃあ嘘なのかよ」
「え、あ、うん、そうなるね」
そうなるね、じゃねーだろ。てかウルキオラ、テメー何を吹き込んでやがるんだ。
「ていうかお前今俺のこと好きって言ったか?」
彼女はハッと顔を伏せる。
「言ってないよ!」
あーあー、必死じゃねーか。
とりあえず俺は彼女の伏せた顔の額にキスをした。
好きか?俺は愛してるぜ?
誘惑して嫉妬させてそれから/オチが見つからなかったよ@薄雲
20110510
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