0053
「あっちゃぁ…ここどこだろう」
なんて呆れた顔で言う女が俺の前にいた。
「迷子かよ」
「うん、迷子」
可愛いとも格好良いとも綺麗とも重なる彼女の呆けた表情は、どこか寂しそうだった。
「破面(アランカル)か」
「うん、破面(アランカル)」
凛としたとも無邪気だとも言えない薄っぺらな困った笑顔。
「えっと名前は?」
「解んない。忘れちゃった。お兄さんは?」
「コン」
「変な名前」
「名前ない奴に言われたかねぇよ」
彼女と共に苦笑する。
「帰んなきゃいけないの。でも道解んないの」
「そりゃ俺も知らねぇや」
「迎えが来るまで帰れない」
「んじゃ、それまで俺と話すか?」
「ううん、それはできない。だって私と話したって知られたらコンさんが殺されちゃうもん」
「そっか」
「うん、じゃあね、コンさん。また縁があったら会おうね?」
「おうよ」
真っ白な服を着た名も知らぬ彼女に、俺は惹かれていた。
箱入り娘/コンとか使ってみたかった@薄雲
20110503
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