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0049
教師パロ


「ねえ先生、先生は宿題とか無くて良いね。私将来教師になろうかな」

「まあ今就職難だしな。って、違うだろ!俺達にも宿題あるんだよ!」

イリアとは、そんな日常的な会話をほのぼのと繰り返すだけの毎日だった。

(ただそれだけの日常生活)

この高校で生徒が教師と交流するといえば月一の交流会。
ある時は共同で料理を作ったり、またある時は必死に運動する。

五月は遠足だった。
現在は6月。
俺の月だ。

まあそれはさておき。六月はドッジボール大会である。

生徒VS教師。

「休みたく思います」

なんて言うイリアに俺はピシッと教師らしく「絶対来い」なんて言った。
らしくないと喚く彼女はさておき。

ドッジボールは俺の得意球技の一つである。
というか俺はスポーツ全般得意だから苦手なものは無い。



「あーあ、ついにこの時が来ちゃったね。先生」

「はいはい。お前は口を閉じて向こう側のコートへ行け」

既に試合開始寸前だが、何故か彼女だけは教師側のコートにいる。どういう事だと問いただしたところで返ってくる言葉は解っている。

「はーい」

彼女はしぶしぶ歩いていく。

試合は開始する。

「おらよっ!」

なんて軽い口調で言いながらボールを彼女へスパーキングする。

「おうわぁぁぁあああ!教師のくせに卑怯だぁ!ちょっとは手加減しろよ馬鹿ぁ!」

長居文句を言いながらそれを必死の表情で避ける彼女。

―――なかなか面白ぇじゃねぇか。

俺の心が躍る。

次々とやられていく生徒達を見送りながら彼女は必死に生きていた。

教師もちょっとずつやられていく。
例えばネリエル。「あ、当たっちゃった」なんて笑いながらコートから出て行った。どうせ面倒だったくせに。
例えばウルキオラ。無言、無表情のまま立っていたら後ろから当てられた。間抜けだ。
例えばノイトラ。背の高さが仇になった。
例えば藍染。かっこつけてる間に当てられた。
例えば市丸。「怖い怖い」なんて言いながら自分からコートを出て行った。
例えばハリベル。「当たった」なんて嘘吐いて出て行った。
その他大勢。色々な理由で。

あ?良く考えたら俺一人じゃねぇか?

コートを見渡す。

俺一人だ。

相手コートには彼女一人。

こっちがボール持ってるから有利だが、生徒達から「さっさと当たりやがれ!」とか「大人気ないぞ!」みたいな台詞が飛び交う。

うるせぇこっちは意地だなんて言わずに

「俺を当てられねぇのか?」

なんて挑発する。

が、その時。

俺の顔面に真っ白いボールが当たった。大した痛さも無いのに、当たった。

「あ、当てちゃった」

真っ白いボールが落ちて彼女の顔が見える。

当てたのは…―――イリアだ。

「ダッセェ!」なんていう言葉が俺の耳に入る。
教師陣のやつらも苦笑している。
ウルキオラなんか口だけ笑ってやがる。

俺はキレた。

ボールを教師陣に投げる。
それがノイトラの顔面に当たる。

「何やってんだテメェ……」

そのボールが今度はウルキオラに当たり、ウルキオラがキレる。いつもの表情のまま、影を濃くして。

「下衆が」

生徒達が体育倉庫から出してきたボールを思い思いに投げ始める。

大乱闘開始までそう時間はかからなかった。

誰が投げたか解らないボールが誰かに当たる。

俺も嘲笑った奴ら全員にボールを投げつける。

ふと、彼女を見ると彼女も乱闘に参加していた。楽しそうにボールを投げつけている。俺の方へ。

それを避けて怒鳴る。

「何しやがるんだゴラァ!」

「あははっ!グリムジョー大人気無いね!」

「あぁ!?イリア!?」

「ほうらいくぞぉ!」

イリアのヘナチョコボールを俺は易々とキャッチして投げ返してやる。
見事ヒット。
足元に。

「もう!痛いなぁ…」

彼女がボールを拾い上げようと腰を落とした瞬間、彼女の後ろからボールが飛んでくるのが見えた。それが頭にヒットする。

「おい!」

「うおわぁ!」

彼女は頭をおさえて座り込んだ。
相当痛かったと思う。飛んできたのはソフトボールではなくバスケットボールなのだから。

「大丈夫か!?」

駆け寄ると涙目の彼女がブイサインをこっちに見せている。

「痛いけど大丈夫」

無理して笑っているのが見え見えだった。
俺は肩を貸す。

「おい、保健室行くぞ」

「うぇぇ」

嫌そうな彼女を無理矢理保健室へ連行した。
たんこぶができている。

適当な処理をして彼女の頭を叩く。

「馬鹿野郎」

「うるさいなぁ…当たりたくて当たったんじゃないっての!」

強みを帯びた語調。

「まあ大丈夫だろ。一応、病院行っとけよ」

医療器具の片づけをする。

「ねえグリムジョー」

「教師だ。先生つけろ先生」

「あのさ、卒業したら言いたいことある」

「?卒業ってどんだけ先の事…」

「良いから。卒業式終わって最初に私とお話してよ?」

彼女はいつものように無邪気に笑った。
なんとなく俺は彼女のしたい事を察したが、わざと解らないフリをした。

交流会/郁香(紫チョウ)様のみお持ち帰り◎。書き直しも受け付けます。@薄雲

20110427



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