0028
※藍染派の破面(アランカル)
「俺の名前は黒崎一護、死神代行、黒埼一護」
「黒崎、一護」
彼の名前を聞いた瞬間、藍染様の注意を思い出した。
“君は弱い。死神、特に黒埼一護に会った時は気をつけなさい。情が移るから。”
情が移る、ですか。藍染様。確かに、そうかもしれません。この真っ直ぐな目をした男になら、情が移ってしまうかもしれません。
「見たところお前、破面(アランカル)だろ?じゃあ敵って事だな」
「確かに私は破面(アランカル)だ。藍染様の為に生きる、破面(アランカル)。それ以上でもそれ以下でもない、ただの道具だ」
ウルキオラ様の真似をして無表情で、平然を装って言う。
「道具、ねぇ」
黒崎一護はバツが悪そうにオレンジ色のツンツンした頭をかいた。
「そうだけど、何?」
本当に、不可思議な男だ。難問中の難問。理解不能な、でも単純な表情。
「本当に、そう思ってんのか?」
「ああ、思っている」
「そうかよ」
「ああ」
黒崎一護は抜刀した。だから私も抜刀する。
「藍染は俺の敵だ。お前も、俺の敵だ」
「そうだな」
霊圧をひしひしと感じる。私になんか勝てない。勝利など無理。そう感じる。それでも、藍染様の仲間であり、道具であり、武器である私は、敵である死神代行黒崎一護に刃向かう。
「だが、俺はお前と戦いたくない」
「それ、負けを認めたの?」
「いや、俺がお前に勝つのは簡単だ。難しくない。だからだ」
「矛盾、してる」
そう苦笑すると黒崎一護は驚いた表情で私を見た。
「笑えるんだな。ウルキオラの奴みたいに無表情な奴だと思ったが、違うか」
「まさか、私はウルキオラ様のように強くないし、カッコよくもないです。ただ、貴方よりは強いと思いますが」
―――藍染様の言った事は、こういう事か―――
「まあ戦いなんてやめようぜ、無駄な争いは避けてぇし」
―――彼の言葉は、人を掴む―――
「でも、私の役割は藍染様の為に命を落としてでも戦う事ですから。争いを避ける事はできません。戦争ですよ?御巫山戯はよしてください」
―――心の在る私は―――
「はいはい、そうかよ。それなら条件つけようぜ」
黒崎一護は意地悪く笑った。
―――情が移りやすい―――
「条件?良いですね。面白そう」
―――どんどん深みにはまっていく。―――
「勝つ条件は相手の手から斬魄刀を放させる事。話した方の負け。そんだけだ」
―――ごめんなさい―――
「良いですね、単純で」
―――私は―――
私は斬魄刀を手から放した。
―――裏切り者です。―――
「おいおい、良いのかよ」
「良いんです。もうここは飽きました。裏切り者も、良いかもしれません」
情/シリアスを装ってみた@薄雲
20110323
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