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0147
※ヒロインが花魁。

「二回目で口をきくようになると聞いた」

「気に入らなければ、すぐ追い出してやりんす」

彼女はギロリと俺を睨んだ。ゾッとさせるような美しい顔立ちだったため、少し魅了された。俺が此処に来た理由なんて彼女は知ったこっちゃない。もしかすると【花魁の体目当て】だなんて思われてるのかもしれない。俺は決してそのようなもの目当てにしていない。どうでもいい。とりあえず、彼女と話をするためにここへと来た。

「その喋り方を止めろ」

「……仕事」

「いや、俺は貴様と話をしにきた。現時点の身分などどうでもいい」

彼女は顔をカァッと真っ赤にして自分を侮辱されたのだと勘違いし口篭って外を見た。持っていた酒をカランと盆の上に放り、「帰って」と言った。

「貴様は忘れてしまったか、俺の事を」

「忘れさせて、忘れた事にさせて、お願い」

彼女は「もう、こっち側の人間なの」と月を見据えた。既に語尾がとれ、元々の口調に戻っている。肩が小刻みに震えてこっちを見ようとしない。

元々、俺達は仲の良い友達だった。否、恋人だった。彼女も俺も同い年で、幼馴染だった。泣き虫の彼女はいつも家事をして、その合間に俺と話していた。同い年で幼馴染と言っても俺は武家の者、彼女は家政婦の子。彼女の親は子供を可愛がる気が無い為、愛を受けずに育ってきた。五つの頃、俺達は出逢った。しかし、十三になる頃、容姿を気に入った人買いが、彼女の親に大金を払い彼女を遊郭へ売った。

「汚いから、私」

「……どうだか」

彼女はチラリと俺を見た。化粧が涙でぼやけている。昔みたいに泣き虫で、変わってないなと思いつつ、彼女と視線を交えてみた。

「私がウルキオラに関わるとウルキオラの迷惑になっちゃう」

「夕海太夫、いや…、イリア」

彼女がびくんと跳ね上がって「その名前はもう捨てた」と哀しげに言った。

「イリアは、俺が買おう」

彼女は一瞬まあるい目を見開いて俺の襟元を掴んだ。

「何言ってるの?遊郭に来てるなんて知られたらウルキオラ…殿様になんて言われるか解らないよ?格下げされたらどうするの?ウルキオラの人生が滅茶苦茶になっちゃうんだよ?なのに…何で?私はなんてどうなっても良いの、ねえ、ウルキオラ。私はもうこっち側だから、だから」

「それなら安心しろ。格なんてくれてやる」

「でも、下手すると殺されちゃうのよ?」

「俺は将軍率いる者の中で四番だ。何をしたって殺されやしない。第一、イリアの事を殿に相談したら買えと命令されたのだ。買わないと、その方が首切獄門と思うのだが、どうだ」

彼女は唖然とした表情でこっちを見た後、再び泣きながら、しかし嬉しそうに笑って「有り難う」と接吻をした。

接吻
(逢いたかった)(ああ)

ついに手を出してしてしまいました@薄雲

20110902


あきゅろす。
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