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※ヒロインが痛い娘です。五歳児程度の以下略。一護をいっちーと呼ぶので嫌悪感を抱く方はバックスペースキーをどうぞ。それからこのお話は一弓様リクエスト(ほのぼの→微裏→シリアス)です。名前変換有り。


学校に来て友達にいつもの適当な挨拶をする。ケイゴ、織姫、水色、エトセトラ。そして鞄を片付けながら周りを見渡す。彼女がいない。まあまだ学校に来ていないのか、と少し気にしつつ荷物を片付ける。彼女と俺の家は全く違う方向のうえ、彼女はバス通学。いつもは俺の来る前に着くバスに乗っているのだが、今日は後のバスで来るか休みらしい。そんなこんなで時間は過ぎる。チャイムの鳴る約一分前に、背の小さい彼女が教室のドアをガラガラと開けた。息を切らせて、俺の元へと飛び込んでくる。まるで時間を気にしていないかのように。手には通学用鞄と、小さな紙袋を持っている。

「いっちー、いっちー!」

俺の前まで来ると彼女はその紙袋を偉そうに、楽しそうに見せびらかした。何でも彼女にとって重要な何かが入っているらしい。いつもの笑顔で俺に笑いかけ、いつもの声で俺に「おはよう」と挨拶。

「ああ、おはよ。で、これは?」

そう訊くとチャイムが鳴った。

「あ、もうこんな時間だったんだ…、後で言う!」

彼女はそう言いながら最前列の自分の席に着いた。

それから昼休み。屋上でいつものメンバーと弁当を食う。彼女はその時に紙袋の中身について話し始めた。

「実は朝、可愛いお店を見つけたのだ!」

「へぇー」

俺はパンをもしゃもしゃ食いながら彼女の話の続きを聞く。

「それで店員さんに色々教えてもらってペディキュアの道具を買ってきたのだ!」

「ペディキュア?」

と俺。

「ウィキペディアと何が違うんだ?」

とケイゴ。

「足の爪にマニキュアする事」

と水色。

「そう!その通り!熟女好きの水色君!」

「間違わないでイリアちゃん。僕はお姉さまが好きなんだ」

「で、それがどうしたんだ?」

俺は水色の言葉を聞かないフリをして彼女に訊いた。

「うん、私不器用だからいっちーにやってもらおうと思って。放課後いっちーの家寄ってくから宜しくね」

水色とケイゴが何かを言っているが俺も彼女も聞かないフリをして話を進めた。

◆◆

「はい宜しくー」

と彼女が生足を俺に見せたのは放課後、俺の部屋にいる時。俺のベッドに腰掛けて、靴下を脱ぎ捨て足を晒す。俺は紙袋から出した、その、ペディキュアの道具を床に並べる。カラフルだなあと思いながら値札を見るとそれは吐き気のする金額だった。流石金持ちお嬢様。お金の感覚が凡人とは違います、と嘯きながら俺は彼女の顔を覗いた。

「で、どんなアートが良いんだ?」

「うん?あー…、そこまで考えてなかった」

おい、それを考えてなかったらどう始めれば良いんだ。そんな事を考えながらじっと彼女の買ってきた道具を見る。赤、青、緑、オレンジ、黒、白、ラメ、エトセトラ。こんなに沢山、たった10の爪に使うのだろうかという疑問が俺の中で渦巻き始める。結論は使わないけど計算無しで買ったからこうなった、だろう。あ、除光液もある。

「決めた」

「ん、で何?」

「いっちーにお任せ!」

結論そこかよ。まあ読めてはいたが。

「解った解った、だけど一つだけ雰囲気とか、リクエストがほしい」

「じゃあ親指の爪には15って書いて」

「語呂合わせ」

「嫌いなのは解ってるけど、いっちーとずっと一緒に入れるでしょ?」

幼稚な考えだなあと思いながら俺は作業をする。一応、透明の液体を最初に塗って、白に青と赤のラインを引いた。それが地。右親指の爪に彼女から見て15と描き、左親指の爪にそれと鏡になるように15と描いた。後は適当にラメとか散らして上から透明液体の塗って終了。

「終わったぞ」

「やった、ありがと!」

彼女は「可愛い」とか言いながら爪を眺める。よっぽど気に入ったらしく「えへへー」なんて言いながら今までに見たことの無いくらいの良い笑顔を、満面の笑みをそれへと向ける。ちょっと、ジェラシー。

「ん、」

だから彼女の首に少しだけ、顔を埋めてやった。

顔を顰めたから、離れてやった。

「ねえ、いっちー」

「何だ」

「死んだりしないよね、ねえ、いっちー。私ね、いっちーの事好きだから、だから…死神の事でどっかに行って、帰ってこないなんてダメだからね」

「!?」

彼女に死神について話した事が無いのに、彼女は死神を知っていた。

「実は私も死神の力、昔はあったんだ。今はもう薄いけど、私はいっちーを死なせたくないから、だから、止めろとは言わないけど、気を付けてね」

俺のワイシャツにしがみついて震える彼女に、ただ単純な驚きと、愛しさがごっちゃになった想いしか宿らなかった。それがただただ印象的だった。床に散らばるペディキュアの道具と、震える彼女の印象といえば、片時も忘れられない。

印象的ペディキュア
(お願いだから、離れないで)
(解ってるから、それ以上悲しそうな顔をしないでくれ)

一弓様リクエスト、一弓様のみ訂正して欲しい箇所とかどうぞ@薄雲

20110717


あきゅろす。
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