0127
彼女は、寝ていた。その小さな体を布に埋めて。「帰ってくるまで寝るな」という言いつけは守らなかったらしい。守れなかったのかもしれない。現世に行っている時間は長かった。だからかもしれない。俺は彼女の横に腰をかけた。ぐるりと部屋を見回す。特別綺麗でも汚くも無い部屋。だが、特別俺の部屋で、棚には特別彼女の所持品やらを置かれていた。時計、アクセサリー、ハンカチ、ぬいぐるみ、漫画、現世から頂戴してきた鉢、エトセトラ。その他チョコレート菓子やらも置かれている。俺の部屋であり彼女の部屋であるこの箱の中で俺はぼぅっとした。暇だ。しかし彼女を無理矢理起すわけにもいかない。第一起きない。一度寝たら、自ら起きるまで深く眠る。死んだように。
「死?」
まさかな。俺も彼女も死ぬわけねー。第一死んでる。これ以上死んで、否、死なせてはなるものか。バサリと上着を脱いで籠に投げ込んだ。シャワー室へと向かう。死に恐怖なんざ最早もたねー。そう自分に言い聞かせた。
だが、もしもその恐怖を持つとしたら、彼女に死が訪れる時と、彼女と逢えなくなる時だろう。
もう一度死んだら、もっとマシな奴になれるのだろうか。それともこれ以上とないくらいの最悪になるのだろうか。
もしも、もう一度死んでも再び彼女に逢えるのだろうか。
そこだけに、恐怖を覚える。別に愛し合えなくてもいいから来世でもどうか彼女に逢いたい。
「死ぬ前に、破壊してやるよ」
そう、そうすれば怖くない。
怖くない、大丈夫
(破壊対象は、敵と、彼女と、俺だった)
ヒロインが喋らないのはすみませんでした@薄雲
20110710
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