0126
※グリムジョーと人間ヒロイン。
「ねえ水色のお兄さん」
「浅葱色だ」
「うん、じゃあさ、浅葱色のお兄さん」
彼女は言い改めた。
「次はいつ逢える?」
「死後」
「そ、そんなあ!」
「冗談だ、いつか逢える」
そう、俺は笑って帰った。
◆
この頃苛つく。とはいうのも任務の場所が現世は現世でもあの女のいる場所じゃねーって事だ。しかも現世で言う平日の昼。彼女は学校っつう場所で日々勉強って事をしてる。サボっちまえと思うが、彼女はあれで頑張っていると思ったら手は出せない。彼女には時間があって、俺にも時間がある。噛み合わない。歯車がどこかで狂ってしまったように、彼女と逢う時間は無い。
そんな事を考えながらベッドに寝転んでいるとノックが聞こえた。霊圧的に、ウルキオラだろう。
「藍染様がお呼びだ」
そう言い残して去るウルキオラ。相変わらず無愛想な野郎だ、と呟きながら俺は面倒ながらも藍染のもとへと向かう。たった一言の任務が下った。簡単な任務。死神を1人討つ事。
そんな任務ものともせず、すぐに終わった。
俺は服の汚れを払いながら適当に現世を散策する。ぼうっと彼女の事を考えていると―――あの霊圧が俺を刺激する。
「あの女…っ!!」
その霊圧は大きくブレながら人間の足の速さで走り回る。彼女の霊圧の背後には虚(ホロウ)の霊圧。つまり、霊圧の強い彼女はその虚(ホロウ)の餌の対象として狙われている、という事だ。走り回る彼女の霊圧を辿って俺は走った。
すぐに追いついたが、少しばかり遅れていた。
「おいっ!」
彼女に駆け寄って揺さぶる。頭を強く打ったらしく「うーん」と唸る。
叫ぶ虚(ホロウ)を瞬間的に真っ二つにして俺は彼女に呼びかける。
「おい!イリア!」
「あ、れ、グリムジョーじゃないか」
意識を薄っすらと漂わせながら驚いた表情でこちらを見る彼女。
「大丈夫か!?」
「うーん、ちょっと痛いけど大丈夫よ」
彼女はむくりと俺の腕を抜けた。大丈夫らしい。意識は薄いが。
「死んだかと思った」
「死んだらグリムジョーとずっと一緒なのに」
「馬鹿かっ。死んでも良い事なんかねーぞ」
俺は微笑する。彼女は微笑む。
「ねえグリムジョー、やっぱりグリムジョーは私のヒーローだね」
「あ?」
「だってね、グリムジョー、カッコいいもん」
彼女はへらりと笑った。
「そりゃあカッコイイのはもともとだが」
「私の事助けてくれた、有り難う、ヒーロー」
マイヒーロー
(ほらね、私の事をまた助けてくれた)(格好良い私のヒーロー)
(俺がテメーのヒーロー?)(そんなの前世から決まってた事だろーが)
ヒーローの御話@薄雲
20110709
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