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「この頃」

俺が口を開くと彼女はきょとんと俺を見上げた。リリネットはいない。調度良い。彼女は「なんだいマイダーリン」と言いながら漫画を置いて俺の顔に自らの顔を近づけた。俺は彼女の瞳を見つめた。じぃっと彼女も俺を見つめ返す。幼稚な顔つきに無邪気さを漂わせながらにこりと笑う彼女に俺はにやりと微笑した。

「手を伸ばそうと思うんだ」

彼女は意味が解らない、と首を傾げた。何でこれで解らないのか俺には全く解らない。この台詞で解ってくれれば、どれだけ第二の告白が楽にいったのだろうか。彼女は鈍感すぎる。鈍感に鈍感を七重ねたくらい鈍感。だから、この次紡ぐ言葉でも解らないだろう。解らないなら解らないなりに俺の言葉を黙って聞け。黙って、全てを包ませろ。なあ?

「手を伸ばして包もうと思うんだ」

「ふうん?」

「早く、俺の物にしちまねーと、終わる気がして」

「?」

怖いんだ、それは言えなかったけど。

黙って聞いてくれるか?黙って包まれてくれるか?そんな思いを馳せながら、俺は彼女に手を伸ばした。

鈍感な君
(いいよ、さっさと包んじゃいな)

稲荷様へ@薄雲

20110706


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