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0120
―――嫌われてるのかな。

そう思う事が多々ある。
いっつもいっつも、「うるせー」とか「うぜぇ」しか言わない。
それでも私はしつこく付き纏ってみるけれど。
全然、こっちを向いてくれない。
デコピン、殴る、蹴る。
そのくらいしか選択肢がないみたいで、諦めかけの私。
チルッチに怒られても、前向きになれないのはあの態度のせいだとこの頃思う。

「はぁ…」

溜息。今日で何回目だろうか。
ただでさえ暗い場所なのに、気分まで暗いだなんて馬鹿馬鹿しい。

その時、部屋の扉が開く音がした。
霊圧が彼のものだった。

どうせ仕事を押し付けに参られたのだろうと思ってクローゼットに飛び込む。
普段霊圧を消しているから諦めて帰ってくれるだろうと思いながら、クローゼットの隙間から彼を覗く。

私を探している様子だ。

ざまーみろ。

彼は一つ溜息をついて持っていた紙の束を私の机に置く。
しくじった。
そうきたか。

さっさと帰ってくれと思いながら見ていると、彼は私のベッドに腰を静めた。
なにしとんじゃい。
さっさと帰れ。
汚れる。座るな。

「何でだろーな」

彼は呟いた。
なにやら切なげな表情。
こういう顔もするんだなあ、と思いながら見つめてみる。
心臓が高鳴る。

でも、その表情で考えているのが私じゃないという事を残念に思う。

あーあ、あんな風に一度で良いから想われてみたいなあ。

叶わない、馬鹿な私。

「素直かあ」

素直?
どういう事だろう。
その独り言。

「て、言ってもなあ」

私は、クローゼットを出た。

「グリムジョー?何でここにいるの?」

グリムジョーはかなり驚いた表情でベッドから立ち上がり私の方に近づいてきた。うわあ、怒ってる。

「盗み聞きかよ」

「いや、私クローゼットの中で寝てたからさ」

「あぁ!?」

「うわあごめんなさい」

凄まれて怖気づいた。

「おい」

「はい」

「あの仕事やっとけ」

「はい」

「それと」

「はい?」

グリムジョーは、唐突に、突然に私を抱き締めた。

「愛してる」


素直
桜月様へ@薄雲

20110703


あきゅろす。
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