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BSR
御伽噺のお姫様.政宗
私の仕事は『お話』をする事。日本中を旅して話を集め、話を聞かせる。だからここ、奥州に来たのは半年振りぐらいかな?
やっぱり寒いな、冬の奥州は。雪も降ってるし。
「人も少ないなー」
人も少ない。あう。ちょっと失敗したかな。これじゃお金もらえないかも。
とか重いながら歩いていると子供たちが雪遊びしているのが目に入った。楽しそうに雪合戦をしている。
「ねー、お姉さんもいーれーてっ」
「良いよ!でもお姉さんだぁれ?」
子供たちが集まってくる。
「お姉さんはね、お話するのが仕事なの。海の向こうのお話を知ってるしこの国のお話も知ってるよ。皆、御伽噺してあげようか?」
子供たちは頷く。
「そうだなー、何が良い?」
「お姉さん、南蛮のお話知ってるの?」
「うん、勿論。知ってるよ」
「南蛮のお姫様の話がいいな」
「良いよ」
よし、それなら私の好きな話、シンデレラにしよう。
「むかしむかし、それはそれはお金持ちの女の子がいました。でも、女の子の小さなうちにお母さんは死んでしまうのです。お父さんは娘に『お母さんが必要』と思って再婚します。でもね、お父さんもすぐに死んでしまうの。その新しいお母さんは酷い人で、お父さんが死んだときから、女の子を小間使いにしてしまうの。家の仕事という仕事を全部やらせるの。酷いで……!?」
そこまで言って子供たちに混じって話しを聞く男に気付く。
「げ、政宗」
「honeyも元気そうだな」
「政宗様の顔見る前までは元気全開だったわよ。今は最悪」
「Ah~?何言ってやがる。honeyを俺はどれだけ待ったと…」
「待てと言った覚えはないもん」
と、口論していると子供の一人が「続は?」と聞いてきたので一旦口論をやめ、シンデレラを話しきった。子供たちは拍手をしてその場から去り、また雪遊びを始める。
「で、政宗。城抜け出して何してたの?」
「見れば分かるだろ?雪合戦だ」
溜息を一つつき、嘲笑ってみる。
「良い大人が子供と雪合戦?しかもここ、奥州筆頭ともあろう者が?ふふっ、あははははっ!馬鹿馬鹿しい!本当に阿呆なのね、変態筆頭伊達政宗様」
「おい、honey、何言ってるんだよ。変態?誰が?」
「政宗様」
「おいおい、勘弁してくれよ。俺は変態じゃねぇって」
「政宗様いっつもベタベタベタベタくっついてくるじゃない。これを変態といわずに何というの?」
「は?お前も変わってねぇな。ああ、それとその『政宗様』っていうのやめろ。政宗で良いって何回言ったんだ?」
「はー?小十郎さんに怒られるでしょ?」
「小十郎なんて関係ねぇよ」
「もー。どっかいけー!」
「ここは俺の国だぜ?」
「じゃあ、私が出て行くわ」
「だからこの国に現在あるものは全部俺のものだ」
「はいはい、さようなら」
「だからお前も俺のもの」
「死ね」
「そんな事言っていいのか?」
「良い」
「……」
「何よ。何か文句ある?」
政宗は眉間に皺を寄せている。全く……子供だ。
「そーいえばよ。覚えてるか?前回奥州に来た時言った事」
うーん、と考えてみる。
あ、
「なあ、honey」「何よ五月蝿い」「次奥州に来た時お前に言いたいことがある」「へー」「聞いてくれるか?」「どうしよっかなー」「……え」「嘘。良いよ。聞いてあげても」「本当か!?流石俺のhoneyだぜ」「で、どんな事言うの?」「お楽しみだ」「ふーん」
という会話をした様な気がする。
「思い出したか?」
「うん。で、言いたい事って何?」
「……やっぱりnextにする」
「ねくすと?」
「次だ」
「はー?約束ぐらい護りなさいよ」
「……ああ、そうだな。まあ、あれだ」
「あれって何よ」
「I love you. You love me?」
「は?あいらぶゆう、ゆうらぶみー?何それ」
「好きだ、お前はどうだ?って意味だ」
「は?」
「どうなんだよ」
「うーん、嫌いかな」
政宗の額に血管が浮かぶ。あーあ、視線が痛い。
「嘘嘘。好きだよ。大好き。あいらぶゆー、ゆーらぶみー?」
「愛してるぜ、honey。城に行こうぜ、祝言をあげる」
「は?誰が誰と?」
「あ?俺とお前だ」
「いやいや、好きとは言ったけど祝言あげるなんて……」
「Ha!!知らねぇなぁ」
政宗は私を肩に担ぐ。所謂俵担ぎ。
「ちょ、おろせぇぇぇえぇええ!!」
御伽噺のお姫様
「嫌だぁぁあああ!!やめてよぉお!結婚なんてしたくない!自由に生きるんだァァアア!」

生意気娘@薄雲

20101218

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