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宿命に生きる忍.政宗


折角。
折角仲良くなった彼女は俺の敵だった。
彼女は酷く綺麗な顔立ちをしていた。その妖艶な笑顔で俺に笑いかけた。今思えばあれは俺の首を狙う者としては普通の好意だったのかもしれない。俺の気をひきその隙に首をとろうという魂胆だったのかもしれない。だが失敗に終わった。だから今夜。
夜の闇に紛れて俺の寝首をかきに来た。
俺は彼女が俺の首を斬るのを寝たふりをしながら待つ。
彼女は腰にさした短刀を抜き、俺の首筋へひんやりとした刃を当てた。
「何故」
彼女は呟くように言う。
「何故抵抗しないのですか」
「そういうお前は俺を殺す事に抵抗を示してるけどな」
ゆっくり目を開けるとそこにはやはり昼間会った彼女がいた。
自分が殺されそうだというのにその日は酷く気分が良かった。
「俺を殺さねぇとお前が死ぬ」
「ええ、そうよ。でもなんだか殺せないの」
「情が移ったか」
「忍者失格ですね」
そう言って彼女は刃を自分の首筋へと当てた。
「自決か」
「ここじゃ汚れますよね、別のところに行きましょうか」
彼女は死ぬというのに酷く楽しそうに笑っていた、否、泣いていた。
「少し喋ったあの時からお慕いしておりました」

宿命に生きる忍/涙を浮かべて@薄雲

20110205

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