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5*



叩いてしまった。
俺は自室へと走りながら、どんな刃物で傷つけるよりも苦しくて痛い感覚を感じていた。
息苦しくて…チクチクと痛い。
部屋へ入れば鍵を掛けて、同室のルキが入って来れない様にしておく。
「俺…なんであんな事…」
自分でも分からない。
俺はマスターが好きで好きで好きで。
いろいろアプローチをして振り向いて欲しかったけど、マスターはこんだけボーカロイドを飼っているのだから生活費を稼ぐのも必死なんだと知ればちょっとは楽して欲しくて、ストレスを貯めない様に刃物をマスターではなく俺に向けてマスターに構って欲しい欲求を抑えた。
日に日に増える傷を見てマスターは驚いて、バカと心配そうな表情をしながら手当てをしてくれる様になって、こういう方法もあるのかとまた傷を作ってはマスターのところへ行って手当てしてもらった。
最近はカイトがよくマスターの近くを取っていた。
あの天然と関わると俺が疲れてしまうので、居ないときに構ってもらう為には朝しかないと思った俺は日が上った頃、カミソリで腕を切った。
つーっと滴る感じにマスターに構って貰えてない欲求不満も溢れて腕中をズタズタにしてたら玄関の閉まる音がした。
気づけばマスターの仕事にいく時間で今度は後悔が募った。
みんな俺を警戒しているし、俺もみんなと群れるのが苦手なため誰も手当てをしてくれないと思って自分でやったのにキカイトはマスターとは違って本気で怒ってきた。
その時からだろうか。マスターや他のボーカロイド達に向ける感情とは違う何かを感じたのは。
「俺…マスター以上にキカイトのこと…」
好きになったかも知れない。と確信のない言葉を呟いてみる。
確かにマスターは大好きだし、ミクやルカに借りた漫画の様な行為をしたいとも思ったけれど、キカイト相手だったら?と変えると顔がじわじわと赤くなるのを感じたのだ。
キカイト…キカイトキカイト!!
「謝らなきゃ…!」
考えてる間に座り込んでしまった体を起こして目元に溜まった涙を拭い鍵を開けて部屋を出るとカイトがいた。
「あ、帯人!キカイトが居ないんだけど知らない?」
「え?」
「さっき一緒にリビング出ていったから知ってるかなー、って思ったんだけど…知らないみたいだね」
どこに行ったんだろ、直ぐに帰ってくるかなー?なんて悠長な事を言うバカを無視して俺は勢いよく玄関を飛び出した。




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