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俺は出会ったその時から気に入らなかった。
目が覚めて見上げて見ると一人の女が俺を見ながらにこにこと憎たらしい程の笑顔を向けて
「初めまして!今日からこの家に住んでいる私の弟と住んでもらうわ。大丈夫、他にもボカロ達が住んでいるし心配ないわ!」
などと言ってきた。
人の話を聞こうともしないし、べらべらと五月蝿く話しかけてくる。
少し黙れないのか、と言ってやろうかと思った所でその女は開いた玄関に佇んでいる一人の男の元へ行ってしまった。
多分、その男が女の言った弟…つまり俺のマスターとなるんだろう。
休日だったせいかぼさぼさであちこちに跳ねまくっている頭を、どうやったらそんな髪が立つんだと眺めていると話は終わったのか二人が近づいてきて男は手を差し伸べながらよろしくとにこやかに言ってくる。
その笑顔が本心からでないと悟り、その瞬間から俺はマスターが嫌いになった。



この家はそう広くはないが、ボーカロイドが住むには充分な広さだ。
さすがに部屋割りは上手くいかなくて相部屋式になったが。
あのマスターに家事やら約束事などいろいろな事を言われたが守る気は更々ないのでスルーし、今はこの家に来てから一週間が経った。
ボーカロイド達やマスターを観察して気づいた事がいくつも合ったが、その中でも驚いたのは皆が皆、それぞれに恋をしている事だ。
一番はじめに気づいたのはアカイトかもしれない。
ソファーでハバネロをかじっていた時にミクオが通りすぎ顔を赤くしていたのを俺は見てしまい、あぁ、こいつはそっちなのかと理解してスルーしようとしたら捕まり今ではアカイトの相談相手となってしまっているのだ。
そんな感じで全員を観察してみると、面白い具合に何角関係という形が出来上がってしまった。
そのうちの何人かは俺に相談をしてくるようになったのは多分アカイト経由だろう。
「おー、キカイトおはよう!」
「………」
「んー、もっとこうさ…笑えないの?無表情つらいし、挨拶ぐらいはして下さい」
「……ふん」
鼻で笑って返事もしてやったのにマスターは不服そうに俺を見ては諦めた様に溜め息をついてコーヒーを飲み干し仕事へ向かってしまった。
…何が不満なんだ?
とりあえず水を飲んで、二度寝しようと自室のドアを開ければいつから居たのか帯人が俺のベッドに腰かけていた。
なぜ?どうして?の前に出てきたのは部屋まちがえた?という疑問だった。
帯人はマスターが好きらしくマスターに近づく者は全て嫌いだ。
同じくらいにマスターの事を嫌う者は全て嫌うため、俺の態度を見ていれば勿論きらっているだろう。
隣にあるベッドを見てみれば同じ部屋になったレンがまだぐっすりと眠っている。
ということはここは俺の部屋ということだ。
つまり、帯人の性格からして俺に忠告するか壊したり脅したりするために来たんだろう。
ヤンデレは手におえないな。
「なんで入って来ないの?」
帯人はつまらない物でも見ているかの様な目で俺を見ながら軽く首を傾げて聞いてきた。
こういう仕草もマスターの気を引くために計算されたものなのだろう。
「別に、珍しいやつがいるなぁっと思って」
「俺は相談に来ちゃいけないわけ?」
こんな朝っぱらからか。
時間考えろ、と言いたいところだが何を言ってもムダな気がした俺はしょうがないなと承諾し帯人の横に腰掛け相談を聞いてやることにした。



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