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恩方とモフモフ
2
金色の耳をピコピコと動かしながらセクセラムの横に座ったアルはガックリとうなだれている魔術師に問い掛けた。

「メイド達から聞いたが、何か要望が有るそうだな?セクセラム殿。僕の力で可能なら叶えるぞ?」
「ああそうだアル。一度私の庵に帰りたいと思ってな…。」
「あぁ、聖所か…。」
「ちょっ!待て!聖所とは何だ!?まさか観光名所にでもなってないだろうな!?」

セクセラムの頭の中に庵に置いてきた色々な物が駆け巡る。

この物語を読んでいらっしゃる素敵な腐女子なら彼の気持ちは分かるでしょう。もし貴方の留守中に部屋の中の秘蔵画像や同人誌の宝の山が不特定多数の人物に見られるとしたら…。

血の気が引く。

「ああ、学者達の聖地みたいになっているぞ。」
「マジか!?なっ中の物はどうなっているんだ!!」
「いや…、庵の中には貴方か張った結界で入れないと聞いているが…。なっ何か都合が悪いのか?」
「そ…そうだった…。」

ダラダラと嫌な汗を流していたセクセラムはそれを聞いて安堵の溜息を付いた。そういえば、五百年前に庵を出る際に結界を張ったんだった。今もしっかり効力を発揮していることに安心した。

「取り合えず、あそこには貴重な文献や研究資材が沢山あるので一度戻りたいのだが良いだろうか?」
「うむ…。あそこは国の重要施設で関係者以外立入禁止だけど、そもそも持ち主本人だしな…。」
「自分の物を確認するだけだ…。今後の身の振り方も考えたい。」
「まぁ、それ位なら大丈夫だろう。くれぐれも学者にばれないようにしてくれ。今の段階で貴方がばれると貴方の身が色々危ない。」
「了解した。空を飛んで行くから安心しろ。」


アルの頭を撫でながら言ったセクセラムの言葉を聞いてアルは、少し恥ずかしそうにしながらスススとセクセラムに近付く。ピトとくっついた彼はセクセラムの両腕に抱き着いた。

「物は相談なのだがセクセラム殿…。別に深い意味はないが、もし一人で大変なら手伝ってやっても良いぞ?」

そっぽを向いているアルだが、その耳はしっかりとセクセラムの言葉を聞こうと、後ろを向いている。

「いや…、子供にはあまり楽しい所ではないぞ?」
「大丈夫だ!僕は剣術の訓練をしていて力もあるし必ず役に立つ!」

ニャーと可愛いらしく、しがみつくアルにプルプル震えながら心の中で悶える変態。

ヘイヘイ!半ズボンから伸びる、しなやかなアルの生足が絡み付いてるゼ!

アルの可愛いらしい提案に「うん」と言いそうになるセクセラムに鈴のような声が掛けられた。

「お待ち下さいませ!」
「そう言うことなら!」
「私たちもお供致しますわ!」

ニャン!と勇ましくポーズを決めて同行を主張するのはメイド娘三人組。その足元には雑巾もとい、グラドが静かに横たわっていた。

「駄目だ!五人も行ったら目立ってしょうがないだろう!セクセラム殿の手伝いは僕がする!」
「あらあら、アル様?産まれて一度もお掃除をされた事もない貴方様が【恩方】様のお手伝いが出来るのでございますか?」
「ニャンちゃら可笑しいですわ!」
「ニャホホホホホ!」
「此処は大人しい私どもにお譲り下さいませ!」

睨み合う金色の子猫と美人猫達。そして足元で静かに横たわる黒猫。

動かないグラドを少し心配したが、今起きられると面倒臭いので放っておくセクセラムだった。

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あきゅろす。
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